9 / 19

第9話

 バス、新幹線、電車。  交通を乗り継ぎ、半日かけて澪は里帰りをした。  蒼大も一緒だ。  澪は、俺が守る。  そう勢い込んで来たのはいいが、泊めてもらうわけにはいかない。  古い信仰が根強く残っている地域だ。  クチナワサマに歯向かうために来たと知れれば、追い出されるだろう。 「大丈夫、野宿するから」 「だから、そんな大きなリュック持って来たの?」  蒼大は山岳部だ。  野宿なんて、お手の物だ。 (それに、この荷物は切り札だからな) 「後で連絡してくれ。絶対だぞ?」 「うん。ありがとう」  砂利道を去ってゆく澪を見送った後、蒼大は荷物を藪に隠して山を登り始めた。  クチナワサマの祠を、この目で見ておきたかったからだ。  標高1000m以下の山なら、楽に登れる。  山道を歩き、蒼大は祠を見つけた。

ともだちにシェアしよう!