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第8話

 田舎出身だから都会に出て流行を追ってたわけじゃないんだ、と澪は言う。 「僕が贄になる日が来るのが怖くて。そんな因習から逃れようと必死になって」 「澪は、恐怖と戦ってたんだな」  蒼大は、澪の両肩をしっかり掴んだ。 「俺も行く。クチナワサマに、澪を連れていかないよう説得する」  その言葉に、無理だよ、と澪は泣いた。 「贄が戻ってきた前例は、無いんだから」 「澪が第一号になればいい」  でも、とまだ渋る澪を、蒼大は抱きしめた。 「俺に任せろ」 「蒼大」  広い、蒼大の胸。  澪は、蒼大の腕の中にいるうちに落ち着いて来た。  彼が言うなら、うまく行くような気がする。 「お前の故郷を紹介してくれよ」 「解った」  澪は泣き止んでいた。

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