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第3話 やりすぎた?

   そんなこんなでこんな関係を始めて、気づけば三年。  俺たちは同じ高校に進学し、互いに彼女もできないまま、高校二年の秋を迎えている。  高二の秋というと、三年の先輩たちがごっそり部活から引退していってしまう時期でもあり、俺たち二年は急激に忙しくなる。だからここんとこ、お互いに部活が忙しくて、俺たちは昼休みや部活前の短い時間でしか”練習”ができていない状況だ。正直、ストレスが溜まってる。  てか、ストレスが溜まっちゃうくらい、瀬名との“練習”に癒しを感じてたのかってことに、自分自身びっくりだけど……。  とある日、朝練を終えて教室に向かっていたら、数人の生徒と連れ立って歩く瀬名の背中を見つけた。向こうも朝練だったらしい。  水泳部の黒いジャージに身を包んだ瀬名の姿は、制服や私服の時とはまた違った魅力があって、すごく凛々しい。何やら楽しげに顔で部活仲間と笑い合っている姿を見ていると、何故だか急にあいつの乳首が舐めたくなった。  俺は教室に向かうあいつの背中に向かって、『昼休みか、部活の前。する?』とLINEを送る。すると瀬名は水泳部の奴らと並んで歩きながらポケットからスマホを取り出して目を落とし、素早く操作してまたポケットにしまいこんだ。  返ってきたメッセージは、『おけ。部活前、屋内プール裏』。  部活で使うプールの裏には、今はほとんど使われていない備品倉庫がある。俺たちが学校で致す場合、大概が体育館のトイレか、その倉庫を使うのだ。  そして教室に入る瀬名の背中を見届け、俺も後に続いて教室に入る。そうそう、俺たちは同じクラスなのだ。俺がすぐ背後にいたことにびっくりしたのか、瀬名は席につきながら目を瞬いて俺を見上げ、ちょっと頬を赤らめた。 「おはよー」 「……お、はよ。なんだよ、後ろにいたのかよ」 「うん、まぁね」  それだけのやり取りを交わしていたら、担任の水原が教室に入ってきた。  俺は一番後ろの自分の席に荷物を置きながら、頬杖をついて水原を見上げている瀬名の後ろ姿を、しばらく眺めた。  +  +  部活の前ってこともあり、瀬名は朝と同じくジャージにTシャツというラフな格好だった。  制服姿だとチャラチャラして見える瀬名だけど、強豪水泳部のレギュラージャージに身を包んでいるときの凄みはなかなかのものだ。そんな男が、これから俺に舐めてもらうためにシャツを捲り上げ、ピンク色の乳首を晒すのかと思うと、ざわざわと妙な興奮が俺の身体を熱くする。  のんびりしている時間もない。俺はつかつかと瀬名に近づき、骨ばった肩をぐいと掴んだ。壁際に積まれたマットの上に瀬名を座らせ、跪いて瀬名のジャージの前をはだける。そして、半ば押し倒すような勢いで、瀬名の乳首にむしゃぶりついた。 「……ちょ! ん……いきなりかよっ……!」 「もっとシャツ、めくって。舐めにくい」 「ん……あ、待てよ、なんだよお前……ァ、あ、」 「瀬名のジャージ姿、すごくいいね。燃える」 「はぁ!? 意味わかん、……ん、んぅ……ッ」  べろん、と舌の腹を使って瀬名の過敏な乳首を舐めあげると、それだけで瀬名の身体から力が抜ける。瀬名は肘をついて上半身を起こしていたけど、その拍子にぱたりと後ろに倒れ込んでしまった。  俺は身を乗り出して瀬名の上に覆いかぶさると、口を大きく開いて瀬名の胸元を包み込み、ちゅう、ちゅっ……と音を立ててそこを吸い上げた。そして舌先を尖らせて、硬くなった瀬名の乳首をねっとりと舐めまわす。すると瀬名はびくっと身体を跳ねて、縋るように俺のジャージを掴んできた。 「ぁ、あぁ……っ……!」 「このあと部活だもんな。……上半身、裸になるんだよね」 「ん、んっ……それが、なんだよ……ん、ふぅっ……」 「ついさっきまで俺に舐めまくられてたココ、水泳部の奴らに見られるんだろ? ねぇ、それってどんな気分?」 「はぁっ!? ……ァ、ん、かけるっ……」  じゅうっ、と音を立てて吸い上げながら、反対側の乳首をきつくつねった。瀬名は背中を反らせて身悶えながらも、高くなる声を恥じるように自分の口を手で覆った。  ここ最近、こうして瀬名に触れる回数も時間も減りっぱなしだ。去年のように、ゆっくりまったり乳首を舐め合って、真っ赤になりながら「翔、ちょっと上手くなったじゃん……」「瀬名だって、舌使いがエロくなってきたよ」なんてことを喋り合う余裕もない。  互いに自慰を見せ合うようになったのも、必要に迫られたからだ。朝練、学校、夜まで部活、週末も部活……という生活に急かされて、”練習”に勤しむ時間が減ったから、いそいそとその場で昂った身体を慰めなければならなくなった。  それまでは、瀬名は”練習”のあとこっそり部屋からいなくなり、十数分後にすっきりした顔で帰ってくるという分かりやす行動を取っていたものだった。  一方俺は、乳首を舐められる快感よりも、瀬名が一生懸命俺の乳首を舐めているという絵面に興奮することが増えてきて、罪悪感のせいでさほど勃起が長続きしなかった。……でも、家に帰って一人になった時、トイレや風呂で瀬名の表情を思い出しながら、何回も何回もオナニーした。それにも激しく罪の意識を感じてたんだけど……。 「ん、ん、んっ……ぁ……」 「瀬名……下もずらして。俺がやるから」 「はあっ!? おまえ、今日変だぞ……!?」 「いいから。時間ないんだろ? 俺だって時間ないしさ」 「でも……!」 「いいから」  恥じらう瀬名のジャージの下を、俺はなんの断りもなくずるりと下げた。すると、分かりやすく興奮状態の瀬名のペニスが、少しきつそうでオシャレな下着の中から姿を現わす。  それはすでに先走りに濡れていて、興奮した男の匂いがふっと香った。白くて平たい腹にくっつくほどに硬く反り返った瀬名のペニスを、俺はふと舐めてみたいと思った。……そして、そんな自分の思考に愕然とする。  ――え、フェラしたいとか俺……何考えてんだよ……!! 俺たちは、そういう関係じゃないのに……!!  しかし、威圧的な黒いジャージを捲くられ、少し赤みを帯びた乳首を唾液でぬめらせ、細く締まった白い腰をくねらせる瀬名の姿は途方もなくエロい。今まで見てきたどんなAVよりもずっとエロい。  俺はゴクリと唾を飲み下しながら瀬名のペニスを見下ろしつつ、唾液に濡れた瀬名の乳首を、指でふにふにとこねくり回す。 「ぁ、あ……ッ、ガン見、すんなよっ……ばかっ、ぁん……」 「ごめん。……だって、瀬名……すごい」 「なにが、ぁ、ああ、っ……ン!!」  特に敏感な方の乳首を、指の腹で潰したりつまんだりしながら、俺は瀬名のペニスを扱いてみた。すると瀬名は心底気持ちが良さそうな甘い声を漏らしながら身をよじり、自分からもゆるゆると腰を振り始めたではないか。 「ぁ、ぁん……ん、すげ、イイ……ぁ、あ」 「……エロ」 「かける……っ、ンあ、イく、イきそ……ぁ、どーしよ……ん、んうっ……!」 「どーしよって……んー、いいよ、出しなよ」 「出しなって……え、……おまっ……何やって!!」  瀬名の喘ぐ姿にすっかり脳みそをヤられていた俺は、特に何をためらうでもなく、瀬名のペニスに口をつけていた。先っぽを口に含みながら根元を絞り上げるように激しくしごくと、どぷ……と瀬名の精液が口の中に迸った。 「ぁ……あんん、ンんっ……!!」  びく、びくと全身を震わせながら絶頂する瀬名の体液を、俺は自然と飲み下していた。  瀬名はだらりと脱力し、マットの上に四肢を投げ出しながら、泣きそうな顔で俺を見つめている。 「翔……お前……何やってんの……?」 「だって、ティッシュとか持ってなかったしさ。これから部活だし、さ……」 「てか、マジ……? 何、これ……俺……」 「……あ」  瀬名の愕然とした表情を見ていると、性的な絵面のせいで痺れていた俺の脳みそが、ようやく正常に働き出した。  そして、途方もなく苦い後悔が、俺の全身をズシンと重くする。  それでも俺は無理に笑顔を作って見せた。そして努めて軽い口調で、慌しく着衣を直す瀬名に向かってこう言った。 「ま、気にすんなって。これも練習だよ、練習」

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