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第13話
「今日は弟の試合があってさ。親は応援で留守なんだ」
この家には3人しかいないから、気兼ねなく騒ごうぜ、と泰彰はジュースを尚に手渡した。
「ありがとう」
今は素直にジュースを受け取る尚が、嬉しい。
令司が選んだ映画は、美しいアニメ作品だった。
初恋も絡めて作ってある、今の泰彰と尚にはぴったりの映画だ。
お喋りしながら観るつもりだった泰彰だが、夢中で観ている尚を邪魔できない。
結局90分、泰彰は何のアクションも起こせずに終わってしまった。
エンドロールを、ぽやっと眺めている尚。
(うッ、可愛いぜ!)
さりげなく、泰彰は尚の肩に手を置いた。
途端に強張る尚に、泰彰は驚いた。
「ごめん。ビックリした?」
「う、うん」
「人に触れられるの、怖いんだ」
「あ……」
ようやく解れてきた尚の情緒だが、彼のトラウマはかなり深い。
(気を付けなきゃいけないな)
少し目を伏せた尚を元気づけるように、令司が喋りかけてきた。
「この映画、続編もあるんだ。今度また、3人で観よう」
「ありがとう」
「サンキュ、令司」
令司にお礼を言った泰彰に、彼は返事をよこしてきた。
「俺はこれから用があるから、帰るよ」
計画通り、というわけだ。
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