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第17話
「僕、飲んでみる」
「尚!?」
「泰彰も、飲んでみて」
そこまで言うなら、と泰彰はコップを傾けた。
無味無臭。
別に、妙な気持ちにもならない。
だが、尚を見て驚いた。
じっとこちらを見ている。
ドキリとする。
こんな尚、初めて見る。
「泰彰、キスしようか」
野暮な事は言わなかった。
ただ愛しい尚の肩に手を置き、そっと唇を合わせた。
温かな、ぬくもり。
ああ、令司。
お前の薬、初めて役に立ったよ。
「ただの水道水でも、効いたはずだ」
隣の理科準備室で、令司はそうつぶやいた。
そして。
「尚の心を溶かしたのは、泰彰の愛、だな」
次はどんな発明をしようかと、令司は微笑んだ。
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