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第2話 ⑤
ぽつ、ぽつと生まれるハルの足跡はもう、頑張らなくても届く距離になった。僕はそっと、ハルの跡に僕のそれを重ねる。
ねえハル。
あの時あんなに世界が輝いていたのは、ハルとそこにいたからなんだ。ハルがいつもよりきらきらして見えたのは、ハルが僕とあの時間を共有しようとしてくれたからだ。
振り返ると、途中から重なった、不格好な一本道ができている。
あの頃はハルの方が大きかった足跡も、今では随分違ってしまった。ハルの足跡に、もう僕の靴はすっかり収まらない。途中で一つになった線はあの頃と似ているのに、ハルと僕が歩いたことは分かるだろうか。
僕は本能で気づいていた。ハルのつけた足跡を踏む、その行為の意味を。だから隠そうと思ったのだ。疚しい心を悟られたくなかった。
僕はハルと、ハルを共有したかった。ハルの身体を、心を、感じたかった。
前に向き直ってゆっくりと、僕はまた真新しくない雪の上に靴底を下ろす。
今の僕は知っている。ふつりと胃の奥から湧き上がった、不思議だった感情の正体を。
知らずと漏れた白い息は、生まれた瞬間に散って消えた。
ああ、あの時こうしてなくなってしまえば良かった。初恋なんて、どうせ叶いやしないのに。
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