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第1話

ロココ調の派手な装飾が、これでもかと施されたイタい建て物。 其処彼処にてんこ盛りに盛られ、辺り一面にむせ返るような匂いを撒き散らしている、バラやらユリやらその他名前の知らない花。 ジューンブライドにこだわった花嫁が選んだ、梅雨真っ只中の6月中旬という日にもかかわらず、ピーカンに晴れ上がった青空。 桐谷悟は、この結婚式場に併設されたチャペルの前に並んで新郎新婦が出て来るのを今か今かと待ち構えている集団の後ろで、今日は郵便ポストが赤いのにも毒づきたい気分だった。 チャペルの重そうな扉が開き、悟をこんなドス黒い感情に染め上げている張本人が花嫁と腕を組み、晴れやかな表情で出て来た。新郎新婦それぞれの親族や友人、職場の仲間たちが花びらを振りまく中、嬉しそうに笑いながら2人で階段をゆっくり降りてきた。 上機嫌で周りを見回している新郎西野友喜と目があったので、悟は中指を突き立てたい気分を押さえて、晴れやかな美しい笑顔を浮かべてやった。

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