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最終話
しらじらとした明かりがさしこみ、肌に寒冷の空気がさした。青の有帽瓶を手に取ろうとすると、ガーレフが抱きしめてリルの身体を寄せた。いくつもつけられた鬱血痕が夥しく浮いている。
「もう薬は飲まなくてよい」
「……え」
首筋にキスされ、ひんやりとした感触に身をよじった。燭台に灯をともすと、淡い光がゆらゆらとはためいた。
「始めから惹かれていたんだ。あらがおうとするたびに、できなかった」
「ガーレフさま」
「番いになったが、会うたびに溺れそうでこわい。今でも手放したくないと思ってしまう。それなら殺してしまってもいいと思った。だが、殺せなかった」
「……」
ハルンの最後の言葉を思い出した。
「なんだ?」
「陛下は十分優しいです」
「そんなはずはない」
「いえ、本当に。この離れの方々が優しいのは陛下のおかげです」
「それならもうあのような言葉を云うな」
「あのような……?」
リルを抱く腕に力が入った。
「……リルへの愛は私が与える。あの言葉はさすがにこたえた」
「も、もうしわけ……んっ」
柔らかな唇を押しつけられる。
それはどんどんと甘く、とろけるような優しさと感情がふたりに募っていく。この番いのために尽くしたい。そして、捧げたい。
いずれ、獣人が人間を支配する時代がおわる。共に共存し、慈しみ合う未来への一歩としてこのふたりの話が紡ぎ継がれることはまだまだ先のこと。双子の男児を授かり、立派に育つと、リルはガーレフの隣で眠るように身罷る。
青の花に囲まれ、永遠と眠った。
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