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後日談

 それから、ノエはカリストの家で暮らすことになった。カリストの住まいはノエとは違い兵舎ではなく、二人で暮らすには充分な広さの家だ。  ノエは本当に騎士団を退団し、家族とも顔を合わせていない。家族どころかカリスト以外の誰とも会っていない。監禁されているわけではないが、ノエは自分の意思で一歩も外へ出なかった。  家事とカリストが持ち帰った書類仕事をするのがノエの毎日だった。そしてカリストが非番の日は、一日中イチャイチャして過ごす。  騎士としてのカリストと同一人物だとは思えないくらい彼はノエに甘い。自分と周りに厳しく、硬派で滅多に笑顔など見せない。そんな彼が蕩けるような笑みを浮かべてノエを可愛がってくれるのだ。  きっと彼のこんな姿を誰も想像していないだろう。自分だけが知っているのだと思うと嬉しかった。  夜、帰宅したカリストを笑顔で出迎える。 「お帰りなさい、カリストさん」 「ただいま、ノエ」  柔らかく目を細め、カリストはノエを抱き締める。抱き締めて、キスをする。キスはどんどん深くなる。 「んぁっ、も、だめ、だめです……っ」  口腔内をべろべろに舐め回され、服の裾から手を差し込まれたところでノエは力一杯彼の胸を押してキスを止めた。ここで止めなくてはキスだけで止まらなくなるのだ。玄関でセックスに至り、そして一度では終わらず寝室に移動し更に何度も抱き合って、結局気づけば朝でカリストはシャワーだけ浴びて仕事へ向かうことになった。騎士団長である彼には栄養のあるご飯を食べてもらわなければならないというのに、逆に二食も食べ損ねさせてしまったのだ。そんなことはさせられない。 「……だめか?」 「だめ、です……っ」  だから、熱を宿しつつ寂しそうな瞳で見つめられても、ノエは心を鬼にして拒否する。 「ご飯とお風呂、どっちにしますか?」 「じゃあ、先に風呂を済ませよう」  そう言って、カリストは当然のようにノエも一緒に浴室へ連れていく。カリストは毎日一緒に入りたがる。彼が帰ってくる前にノエが先に入浴を済ませてしまったら、深く落ち込んで恨めしげな目で見られた。それ以来、ノエは彼より先に一人でお風呂に入るのをやめた。  ノエの体はカリストに隅々まで洗われ、彼の体はノエが洗う。大きな体を丁寧に洗えば、カリストは嬉しそうに微笑んで褒めてくれる。最初は緊張して洗い方もぎこちなかったが、彼に喜んでほしくて気持ちよくマッサージするような洗い方を覚えた。  互いを洗い終えた後は、一緒に浴槽に入る。ノエはカリストの胸に背を預けるような形で、ぴったりと体を重ねる。  するとカリストは必ずノエにちょっかいをかけてきた。ちゅぱちゅぱと耳朶を吸われ、かぷかぷと甘噛みされ、ノエが擽ったさに身を捩れば顎を後ろへ向けられ唇を貪られる。ノエの舌を吸いながら、カリストの手がノエの肌の上を這う。片手が胸元を柔らかく揉み、もう片方の手が内腿を撫でるのだ。ぞくぞくと快感が這い上がり、そのまま縋りつきそうになるのをこらえてノエは唇を離す。 「はっあっん……だめ、だめです……っ」  制止の声を上げ、懸命に彼の手の動きを止める。そうしなければ止まらなくなるからだ。このままここで体を繋げれば、一度では治まらなくなり浴室からまっすぐに寝室へ移動し、そして気づけば朝になっているのだ。 「……だめか?」 「あんっ、だめ、だめぇっ」  耳元に熱い吐息を吹き掛けられながら乳首を優しく摘ままれても、ノエはかぶりを振って快楽に流されまいと必死に耐えた。 「ご飯、カリストさんに食べてほしくて作ったから……お願い……」 「そうだったな。ノエを食べるのはご飯の後にしよう」  怪しく体を撫でる手が離れてほっと息を吐く。のぼせるほど長くお湯に浸かっていたわけでもないのに体はのぼせたように火照っていた。  お風呂から上がって、向かい合って食卓につく。カリストは自分の膝の上にノエを座らせ食べさせたがるが、それだとカリスト自身の食事が疎かになり時間がかかるのでそれは非番の日だけにしてもらっている。  ノエの料理の腕は毎日こなす内にぐんぐん成長していった。騎士としての才能はまるでなかったが、料理の才能はそれなりにあったのかもしれない。料理だけではなく、色々と挑戦してみればノエに最適な職業を見つけることはできただろう。バエンスエラ家に産まれていなければ、ノエの人生は全く違うものになっていたはずだ。カリストと二人で過ごす今の生活が幸せなので、もう過去のことはどうでもいいけれど。  カリストはノエの料理を必ず褒めてくれる。そして感謝もしてくれる。彼に疎まれていると思っていた頃は想像もしていなかった。無口で無愛想だと思っていた上司が、恋人にはこんなにも甘くて優しいなんて。  食事を終えた後、使った食器を二人で洗う。ノエが一人でやると言っても、カリストはこうして二人で並んで作業するのが楽しいのだと、仕事で疲れているのに手伝ってくれるのだ。嬉しいが、これでは一日の疲れが取れないのではないかと心配だ。彼がノエよりもずっと体力があるのは知っているけれど。  寝室へ移動すればカリストは当然のことのようにノエを抱くから、体が全く休まらないのではないかと不安に思う。 「あ、あの、今日は一回だけにしませんか……?」  ベッドに寝かされ衣服を脱がされながら言えば、カリストは不満げに眉を寄せた。 「何故だ?」 「だって、カリストさん、明日も、お仕事……」 「そう。だから、明日も頑張れるよう癒してくれ」  こんなことをすれば癒されるよりも逆に疲れると思うのだが。だからノエが動けばいいと思って彼の上に乗っかって頑張って腰を振ったこともあるが、そうするとカリストを余計に興奮させてしまい、結局押し倒されてめちゃくちゃに抱かれる結果となった。 「ノエ、ノエ」 「カリスト、さ、んんっ」  唇を塞がれ、それ以上はなにも言えなくなってしまう。  互いに全裸になり、触れ合う肌の感触が心地よく、ノエの思考がとろりと溶けていく。  とにかくカリストはノエを甘やかし可愛がる。前戯にたっぷりと時間をかけてノエをぐずぐずにさせるのだ。  彼に散々弄られ続けた乳首は、確実に以前よりも大きくなり色も濃くなっていた。その卑猥な変化をノエは恥じたが、カリストが「俺がノエのここを開発したんだな」と嬉しそうに自慢げに言うので、彼が喜んでくれるのならまあいいかと思った。どうせカリストにしか見せることはないのだから。  そのカリストに開発された乳首を舐めて吸われて指で捏ねくり回されると、それだけでノエは射精してしまうようになってしまった。  ノエは堪らなく恥ずかしいのに、カリストが「可愛いな、ノエ。乳首だけでイけて偉いぞ。感じやすくて可愛い、好きだよ、ノエ。もっともっといやらしくなっていいからな。俺はノエが気持ちよくなってくれると嬉しいんだ」と言って褒めて甘やかすから、ノエは羞恥心などそっちのけで「もっとぉ」とねだってしまうのだ。  ぺニスも、いつもたくさん可愛がられる。いってもいっても舐めしゃぶられて精液を啜られる。飲んでは駄目だとノエは止めるが、「ノエは俺のものだろう? ノエの体液も一滴残らず俺のものだ。甘くて美味しいノエを俺に味わわせてくれ。いい子だな、ノエ。俺の為にたくさん射精できて偉いぞ」と言われるとノエは嬉しくなってまた精液を漏らしてしまうのだ。  何度も射精してくったりとなったノエの体をひっくり返し、カリストはうなじや背中に吸い付いてたくさんの痕を残す。そうしながら徐々に下へ下り、彼の唇は腰から臀部へと移動する。尻臀をぬるりと粘膜が這い、その擽ったいような感触にびくびくと体が震えた。双丘の狭間を伝い、舌が後孔に触れる。カリストはひくひくと収縮するそこの皺の一本一本を丁寧にねぶった。  そんな箇所を舐められるなんて、最初の頃ノエは泣いてやめてと頼んだ。するとカリストは「なら慣れるまで舐めてやらないとな」と言って延々そこを舐め続けた。表面だけでなく、内部まで念入りに執拗にねぶられた。それ以来、ノエは「舌ぬぽぬぽされるのきもちいぃっ」と素直に口にすることにした。実際、そこを舐められるのは気持ちがよかった。中をぬちゅぬちゅと掻き回され、出し入れされる快楽に背中を仰け反らせてよがった。  舌で充分に解されたそこに、今度は指を入れられる。ノエのものよりも太くて長い指を根本まで埋め込まれても痛みなど感じない。内壁は喜んで受け入れ甘えるように絡み付く。  きゅんきゅんと蠢く内部を、カリストはゆっくり時間をかけて指で押し広げていった。「ノエの中、柔らかくて気持ちいいよ。嬉しそうに俺の指を締め付けて、可愛いな。ここをよしよししてあげような。ノエはここを撫でられるのが大好きだろう? ああ、イッたのか。気持ちよくなれて偉いな。いい子だ、ノエ。たくさんよしよししてやるからな」と言ってカリストは指で前立腺を何度も擦った。指で挟んでごりごりしたり、ぐりぐりと強く押し潰したり、あらゆる方法で快感を与えてくる。ノエは射精を伴わない絶頂を繰り返し、目も眩むような快楽に溺れた。  我慢できず、「もうカリストしゃんの大きくて太いの入れてくださいぃっ、奥までいっぱいにしてぇっ」とノエがねだって漸く指を抜かれた。  思えばカリストを団長ではなく名前で呼ぶのにもすっかり慣れた。カリストは名前で呼ばせたがり、ノエがうっかり団長と呼んでしまうと、愛撫が更にねちっこくなり気持ちよすぎて泣いてもやめてもらえず、何度せがんでも体を繋げてくれなくて、大変な目に遭ったのだ。それからは間違っても団長と呼んでしまわないよう気を付けていたら、いつの間にか名前で呼ぶのが自然になっていた。今ではうっかり団長と呼んでしまうこともない。  うつ伏せになるノエの背中にカリストが覆い被さり、反り返った男根が臀部に押し付けられる。 「んぁあっ、早くぅっ」  焦れたように尻を振れば、ぐぷ……っと後孔に亀頭がめり込んできた。そのまま、ぐぷぐぷぐぷっと奥へ押し込まれる。 「ひっ、ああああぁっ」  剛直に入り口から奥まで一気に擦り上げられ、ノエは甲高い声を上げて絶頂を迎えた。 「入れただけでイッたのか? ノエのここはすっかり俺のものに馴染んだな。中がぎゅうぎゅううねって俺も気持ちいいよ」 「んあっあっひぅんっ、うれし、カリストしゃ、の、いっぱい、入って、ぇあっあっあああっ」  ごりゅっと、亀頭が奥の入り口に到達する。 「あっあっあっ、しょこ、しょこぉっ、入れてっ、奥までほしぃっ」 「ああ。ノエは一番奥を抉られるのがすっかり好きになったな。嬉しいよ、俺のものを全部受け入れてくれて」 「しゅきっ、おくぅっ、んっひっひっひううぅっ」  ぎゅぽんっと、亀頭が最奥を貫いた。その刺激に、ノエはまた絶頂に達する。  カリストの下腹とノエの臀部がぴったりとくっついて、本当に彼の全部を自分の体に受け入れているのだと思うと心は歓喜で満たされた。  シーツを握るノエの手の甲に、カリストの手が重なり包まれる。 「ひっあっあっあうっ、きもちいっ、ひぁううっ」 「ああ、俺も気持ちいいよ。ノエの奥が一生懸命俺のものを扱いてくれてる。いい子だな、ノエ」  ぐぽっぐぽっと亀頭が最奥を行き来するたび、ノエは絶頂へ導かれる。何度も何度も繰り返され、いってもいっても終わらない。開きっぱなしの口からはだらだらと唾液が零れ、情けない声を寝室に響かせ続けた。 「んひぃっひっあっ、カリストしゃ、ぁあっあっ、しゅき、しゅきっ、はひっひんんぅっ」 「俺も好きだよ、ノエ、可愛いノエ、俺のノエ」  耳をねぶりながら熱を帯びた声音で囁かれる。 「ノエ、俺のものだ、俺だけのノエだ」  ノエの脳に刻み付けるように繰り返し囁かれる。  そんなことをしなくても、もうノエはとっくにカリストがいなければ生きていけなくなっていた。身も心もすっかり依存し、彼に溺れているというのに。  けれど、彼の剥き出しの独占欲をぶつけられると、この上ない愉悦にノエの胸は満たされた。 「ひはっあっひぃっんんっ、しゅき、カリストしゃぁんっ、しゅきっ」 「好きだ、愛してるよ、ノエ」  内奥を突き上げるカリストの動きは速くなる。ばちゅんばちゅんと肉のぶつかる音を響かせながら、激しく体内を穿つ。  ごちゅんっと一際強く最奥を貫き、同時にびゅっびゅーっと精を放った。  勢いよく注がれる彼の体液を受け入れながら、ノエはうっとりと瞳を蕩かせる。  心が満たされ、ノエは確かに幸せを感じていた。  カリストが幸せという感情を教えてくれた。彼でなければこんな幸せは得られなかった。彼だけがノエに幸せを与えてくれる。  ノエも同じだけ、いや、それ以上に彼を幸せにしたい。  強くそう願いながら、ノエは彼の大きな手をぎゅっと握り締めた。  

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