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甘やかされて溶かされて
バエンスエラ家は騎士の家系だった。バエンスエラの名を持つ騎士は優秀で多くの功績を残してきた。誰もが憧れる騎士の鑑。バエンスエラは代々そんな風に称されていた。
バエンスエラ家に産まれた五人兄弟の末っ子のノエも、当然のように騎士になるように育てられた。幼い頃から厳しく鍛えられてきた。
バエンスエラの血を引きながら劣等だったノエは、父から課せられる鍛錬についていけなかった。兄達が一日で習得できるような簡単なことも、ノエは倍以上の時間をかけなければできなかった。
失敗する度に父はノエを叱責した。
どうしてこんな簡単なこともできないのかと。
そして兄達はノエを嘲笑した。
出来損ない、落ちこぼれ、無様だと。
訓練と称して暴力を振るわれた。兄達は父の目を盗んで無力なノエを痛め付け、憂さ晴らしをする。
母はそれを傍観していた。口を出して余計な揉め事を起こしたくなかったから。
父も、誰も、いつしかノエに全く期待しなくなった。
それでも、ノエは期待に応えようと努力はしたのだ。兄達よりもずっと長い時間木剣を振り続け、夜遅くまで一人でトレーニングを重ねた。
人一倍努力した。掌は血塗れで、体は痣だらけ。
けれどどれだけ努力しても、父や兄達には遠く及ばない。体力も筋肉もつかない。努力は実らず、家族には蔑まれ、ノエは自分がなんの為に生きているのか、なんの為に生きればいいのかわからなくなっていた。
そんなとき、遂にノエも騎士団に入団することになった。
期待はされていないが、騎士になることは強制された。バエンスエラ家に産まれてきた以上、避けては通れない。
けれど、とてもじゃないがノエが騎士団の厳しい訓練についていけるとは思えなかった。入団したところで役立たずのお荷物になるのは目に見えている。
だからノエは父に文官になりたいと伝えた。
勉強はできたので、騎士よりも余程ノエに向いた仕事だと思った。自分の能力を活かせる職場で働きたい。
はじめて自分の意思を口にすれば、父に思い切り頬を打たれた。
バエンスエラ家の男が甘ったれたことを言うなと。
父に逆らうことは許されず、強制的に騎士団に入団させられた。まともに入団試験を受ければ確実に落とされるので、バエンスエラ家のコネを使って試験は免除された。
ノエは第五騎士団に配属された。
試験も受けず入団を果たしたノエを、団員達はよく思わなかった。実力もないくせに努力もせず騎士になったノエを歓迎する者など一人もいなかった。
それは第五騎士団長のカリストも同じだった。
カリストはノエを一目見た瞬間、まるで不快なものを見たかのように眉を顰めた。
ノエは見るからに軟弱で、使えないと思われたのだろう。お荷物が自分の騎士団に入ってきたのだ。迷惑に思って当然だ。
カリストはバエンスエラ家の者達に劣らぬ優秀な騎士だった。鍛えられたがっしりとした長身の肉体。目付きは鋭く表情は厳しいが、精悍な顔立ちは美しく整っている。
ノエも密かに彼に憧れていた。そしてその憧れていた人物に嫌悪の滲む視線を向けられ、ズキリと胸が痛んだ。
せめて足だけは引っ張らないように。役に立たなくても、迷惑はかけないように。ノエはそう心掛ける。
けれど、騎士団の鍛練にもついていけないノエはやはり厄介者でしかない。一日のメニューを他の団員達がとっくに終わらせているとき、ノエは漸く半分に差し掛かったところだった。
毎日毎日、ノエは他の者より大幅に遅れて鍛練を終わらせていた。それは一月過ぎても変わらず、その頃には第五の団員だけでなく、他の騎士団の団員にまでノエの噂は広がっていた。バエンスエラ家の落ちこぼれ、能無し。誰もがノエをそう評価した。
今日もまた、ノエはたった一人訓練場に居残っていた。
それを離れた場所からカリストが見ていた。
彼の表情は厳しい。射殺さんばかりの鋭い双眸でノエを睨んでいた。
それを見ていた団員達の囁きがノエの耳に届く。
「団長めっちゃ睨んでるぜ」
「こえー」
「でも無理もないよな、アイツ簡単な訓練にもついてこれねーし」
「バエンスエラの血を引いてるとは思えないよな」
陰口を叩かれるのはいつものことだ。幼い頃から兄達にも言われてきたので慣れている。今更なにを言われても傷つかない。
ノエは無心で鍛練を続けた。
その間も、カリストの視線は向けられていた。
カリストは無口で、愛想のいいタイプではない。けれど口数は少ないが団員一人一人に的確にアドバイスをし、褒めるときは褒め、叱るときは叱る。
けれど、ノエにはなにも言わない。
睨んではくるが、一度も叱責されたことはない。
ノエがあまりにも使えなさすぎて呆れているのだろう。きっとなにを言っても意味はないと諦められているのだ。
内心、さっさと退団してほしいと思っているはずだ。使えない団員などいても邪魔なだけだ。
できることなら、ノエも辞めたかった。憧れていたカリストに疎まれてまでここにいたいとは思わない。辞めた方が騎士団にとってもいいだろう。その分、新たな人材を入れられるのだから。
しかし、きっと父はそれを許さない。バエンスエラ家の男は騎士でなければならない、とそんな風に頑なな考えを持ち、決して曲げることはない。それがノエの父なのだ。
辞めたいとは思っても、ノエは鍛練は手を抜かなかった。どれだけ時間がかかってもメニューをこなし、自主練も欠かさなかった。努力が実らなくても努力は続けた。できないからこそ、誰よりも努力した。辛くても苦しくても投げ出したりしなかった。逃げることだけはしなかった。
それでも、それから数ヶ月過ぎてもなにも変わらなかった。嘲笑され、蔑まれ、疎まれ、それがノエの日常だった。
そんなある日のことだ。
鍛練を終わらせシャワーを浴びて汗を流していたとき、いきなり数人の男が入ってきた。いつもノエが入る時間は既に全員が済ませた後だ。大浴場を一番最後に使うのは、遅くまで居残っているノエだ。
入ってきた男達は全員衣服を身に付けたままだった。
異様な雰囲気にノエは身震いする。
第五ではない、他の騎士団の団員達のようだ。全員ノエよりも体格が大きく、そんな彼らに囲まれてノエは逃げ場を失う。
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる男達を前に、ノエは懸命に虚勢を張る。
「僕に、なにか……?」
「俺達がお前を使ってやろうと思ってよ」
「使う……?」
「そうそう。騎士として役に立たないお前の使い道を考えてやったんだから感謝しろよ」
「な、なにっ……ぅあっ……!?」
肩を強く押され、ノエは浴場の床に倒れる。
痛みに顔を歪めるノエを、男達は悪辣に嗤い見下ろしていた。
「お前にできることなんて、俺らの性処理くらいだろ」
「どうせ騎士の仕事なんかこなせないんだから、せめて俺らの性欲発散に付き合えよ」
「な、なにを……」
ノエは愕然と男達を見上げる。
彼らの獲物を狙うような嗜虐に満ちた瞳に見据えられ、ゾクリと悪寒が走り抜けた。
冗談でもなんでもなく、彼らは自分を慰み者にしようとしている。
そう理解した瞬間ノエは逃げ出そうとするが、素早く体を押さえつけられる。左右から背後から正面から腕を伸ばされ拘束され、抵抗もできない。
「逃げようとしてんじゃねーよ」
「俺達が使ってやろうって言ってんだから、もっと有り難がっていいんだぜ」
「優しい俺らに感謝しろよ」
蒼白になり震えるノエを見て男達は嘲笑う。
錠剤を口の中に捩じ込まれ、吐き出す暇を与えず続け様に酒の入った瓶を突っ込まれ、中身を流し込まれる。大量に流れ込んできたそれを反射的に飲み下す。口の中にあった錠剤も一緒に喉に流れていった。
慣れないアルコールに噎せる。喉が熱い。頭がくらくらする。
「なに、なにを……飲ませ……っ」
「心配すんなって。ただの、気持ちよーくなれる薬だ」
「わざわざ用意してやったんだぜ」
「俺らってほんと優しーよな」
ギャハハと男達の笑い声が響く。
アルコールのせいで体もうまく動かせなくなり、思考もぼやけていく。その上、怪しげな薬まで飲まされた。
もう、絶対に逃げられない。
ノエは絶望した。
どうしてこんな目に遭わなくてはならないのだろう。
好きで落ちこぼれに産まれてきたわけじゃない。
努力してこなかったわけじゃない。
精一杯、生きてきた。
それなのに、こんな風に辱しめられなければならないのか。
自分はなんの為に努力してきたのだろう。
努力なんてしなければよかったのか。
全てを諦めて、逃げ出していればよかったのだろうか。
もうわからない。
無遠慮に触れてくる男達の手の感触が不快だった。気持ち悪い。情けない。嫌だ。助けて。
色んな感情が沸き上がる。
アルコールのせいか、意識が朦朧としてきた。
頭がぐらぐら揺れる。
男達の喚き声。ぶつかるような音。それらが遠くに聞こえていた。
気づけば、体に触れる手がなくなっていた。
どうして、と疑問に思うけれど、なにが起きたのかを確かめることもできないままノエは意識を失った。
ゆっくりと意識が浮上する。ノエは大浴場の床ではなくベッドの上にいた。全裸にタオルを巻き付けられた状態で寝かされていた。
体を起こすと、横から差し伸べられた大きな手が背中を支えてくれた。
「大丈夫か?」
優しく問いかける声が誰のものかはわからない。ただ労るように背をさすられ、ノエの張り詰めていた心が弾けた。
「なんでっ……なんで僕が、こんな辛い思いしなきゃならないのっ……!?」
今までずっと耐えてきた。辛くても苦しくても一度も泣き言を言わなかった。
まだアルコールが抜けず、恐怖に晒され興奮状態にあったノエは、抑えていた感情を爆発させた。
「好きで騎士団に入ったんじゃないっ! 辞められるならとっくに辞めてるっ、役に立たないなんて自分が一番よくわかってるんだっ」
一度吐き出せば、もう止まらなかった。
「好きでバエンスエラ家に産まれてきたんじゃない! 全部勝手に決められて、僕の意思なんて誰も聞いてくれなくて、努力してもなにも認められなくてっ……じゃあどうすればよかったのっ……!?」
ぼろぼろ溢れる涙を、優しく指で拭われた。
「わかってる。お前はよく頑張ってる。お前は偉いよ。誰よりも努力してる。誰が認めなくても、俺だけはお前を認めよう」
ゆっくりと頭を撫でられる。
はじめてのことにノエの胸は震えた。
「いい子だ、ノエ。お前は努力を怠らない、強くて逞しいすごいヤツだ。人一倍努力をして、決して弱音を吐かない。誰にでもできることじゃない。お前はすごいよ。とても頑張ってる」
穏やかな声音で何度も褒められ、ノエの冷たく凝っていた心がじんわりと温められ、溶けていく。
どれだけ努力しても、結果の出せないノエは誰にも褒められなかった。努力を認められることなどなかった。
「ノエ、ノエ、お前はいい子だ」
低く響く声音で優しく甘やかすように名前を呼ばれ、体が歓喜に震える。
身も心もとろとろに溶かされていく。
「嬉し、い……」
ふにゃりと頬を緩めれば、唇に柔らかいものが触れた。しっとりと重なるのが男の唇だと気づいても嫌悪はなく、寧ろもっと深く感じたいと思い自分から摩り寄った。
「可愛い」
感嘆の呟きと共に、唇を啄まれる。
慈しむようなキスに、ノエは陶然となった。
もっと甘えたい。甘やかしてほしい。
理性を手放したノエは、自分の望むままに「もっと……」とねだった。そうすれば、望むものはすぐに与えられた。
「んっ、ふぅんっ……」
熱い舌が口の中に差し込まれる。ぬるぬると口腔内を舐め回される感触は心地よく、ノエはうっとりとそれを受け入れた。自分からも舌を動かしてぺろぺろと相手の舌をねぶる。
ぴちゃぴちゃと濡れた音を立てながら、相手が誰かも認識できないまま、ノエは甘い口づけを堪能した。相手が自分よりも大きな男だということ以外、ぼやけた頭ではわからなかった。わかろうとしなかった。相手が誰でも、甘やかしてくれるのならそれでよかった。
「きもちぃ……はっ、んっんっ……」
「そうか。可愛いよ、ノエ」
褒めるように頭を撫でられると堪らなく嬉しくて、ノエは夢中でキスに応えた。男の薄い唇を食み、肉厚の舌にちゅぱちゅぱと吸い付く。
男の体に縋るように身動いでいるうちに、纏っていたタオルは剥がれていた。露になったノエの股間は既に張り詰めたらりと先走りを滴らせていた。飲まされた薬のせいか、どんどん体が火照っていく。下半身がじんじんと熱を持ち、もどかしさに腰を捩る。
「んぁあっ」
ぷるぷる震えるぺニスを大きな掌にやんわりと握り込まれ、ノエは背中を仰け反らせた。
「あっあっあんっ、だめっ、そこっ、あぁっ」
「ダメじゃない。気持ちよくなっていいんだ」
「んっあっ、だめ、じゃない……?」
「そうだ。ここを擦られて気持ちいいだろう?」
「ひあっあっあぁんっ、くちゅくちゅっ、きもちいいっ」
「うん。気持ちよくなれて偉いな、ノエ、可愛いよ」
よしよしするようにぺニスを上下に擦られ、甘い囁きを耳に吹き込まれ、ノエは瞳をとろんとさせる。
気持ちよくなったら褒められると教えられ、ノエは我慢することなく快感に身を委ねた。
「んひっひっ、ああぅっ、いいっ、きもちぃっ、あっあっ、先っぽ、ぬるぬるされるのしゅきぃっ」
「よしよし、いい子だ、ノエ、もっともっと気持ちよくなれ」
「ひあぁあんっ」
敏感な鈴口を指の腹で擦られる。止めどなく滲み出る先走りをぬるぬると塗りつけられ、蕩けるような快楽にはしたなく腰が浮いた。
「あっあっんあぁっ、いっちゃ、あっあっ、出る、出るぅっ」
「出していいぞ、いっぱい出していいんだ」
男はちゅっちゅっとノエの唇にキスをしながら、ぺニスを扱く手の動きを速くする。
ノエは呆気なく吐精した。
「上手に出せたな、偉いぞ、ノエ」
「えへ……」
褒められて、ノエはへらりとだらしない笑みを浮かべた。
男はノエの顔にたくさんキスを落としながら、力の抜けたノエの体をベッドに横たわらせる。
薬の効果なのか、一度欲を吐き出しても体の熱は冷めなかった。男の唇の感触が気持ちよくて、またすぐに中心に熱が灯る。
男の唇は、顔から徐々に下へと下がっていく。首筋を辿り、胸元にちゅっちゅっとキスを散らす。皮膚を優しく吸われ、甘噛みされ、可愛がるような愛撫にノエは身悶えた。
男の唇が、胸の突起に触れた。
「ひゃあんっ」
そこをぬるりと舐め上げられ、甘い快感が走り抜けた。胸を突き出すように背中が浮く。すると男の口の中に乳輪ごと含まれてしまった。
「んあっあっあんっあぁっんっ」
温かくぬめった粘膜に包まれ、じゅうっと吸い上げられると気持ちよくて断続的に嬌声が漏れた。ツンと尖った乳首を交互に舐めしゃぶられ、ノエは身をくねらせて快楽に耽溺する。
「ふああっあぁんっ、きもちいっ」
「可愛いな、ノエ。ノエのここもすごく可愛い。たくさん可愛がってやろうな」
「あっあっ、うれしっ、ちゅうちゅうされるのきもちいぃっ、あんっ、指でくりくりされるのもすきぃっ」
素直に気持ちを吐き出せば、褒めるように更なる快感を与えてくれる。
褒められ、可愛がわれ、甘やかされる。それはノエにこれ以上ない愉悦をもたらした。
「いいっ、あっんあっ、もっとぉっ」
「可愛い、素直にねだれて偉いな、こっちもまた気持ちよくなろうな」
「ひぁんっ」
再び頭を擡げていたぺニスを、ぬちゅぬちゅと扱かれる。同時に乳首も刺激され、ノエは強い快感に翻弄された。
「はっあっあぁんっ、いく、いくっ、またいっちゃうぅっ」
「いいぞ、ノエ。ノエが気持ちよくイくところを俺に見せてくれ」
「んっあっあっあっ、~~~~~~っ」
ノエはガクガクと腰を揺らしながら、下腹部に精液を飛び散らせた。
「可愛かったよ、ノエ。いい子だ」
はしたない姿を晒すノエを、うっとりとした声で褒めてくれる。
嬉しくて、今まで我慢してきたものが決壊したようにもっともっとと求めてしまう。
「もっと気持ちいいことして……いい子いい子して……」
「ああ。もっともっと気持ちよくなろうな。たくさん褒めて、可愛がってあげよう」
蕩けるような声音が返ってきて、ノエは恍惚とした表情を浮かべ男に身を差し出した。
ぬるりとした粘液を後孔に塗られて思わずびくりと肩を竦ませるが、「怖がらなくて大丈夫。ここはノエがいっぱい気持ちよくなれる場所なんだ」と言われ、すぐに体から力を抜いた。無条件で男の言葉を受け入れていた。彼に任せていれば大丈夫なのだとすっかり信じきっていた。
ぬるぬると、粘液を丁寧に塗り込まれる。蕾は徐々に綻びはじめ、それを見計らってぬぷりと指を差し込まれた。
「ひうぅっ」
「大丈夫か? 痛くはないか?」
太くごつごつとした指を中に埋め込まれ、違和感はあったが痛みはなかった。
「んっ、だいじょうぶ……」
「そうか。すぐに気持ちよくなるから、少し我慢してくれ」
「うんっ……あっあっ、くふぅんっ」
どろどろと粘液を流し込み、ぬめりを帯びて指が奥へと進む。
内部を探る硬い指が、にゅるんっとなにかを擦った。
「んひあぁあっ……!?」
強烈な快感が駆け抜け、ノエは目を見開く。
「ひっあっあっ、なにっ、んあっああっ」
「いい子だな、ノエ。ちゃんと気持ちよくなれて偉いぞ」
「あっあっ、え、偉い? のえ、えらい?」
「ああ。とってもいい子だ。ここもよしよししような」
「んあぁあぅっあっあっひうぅんっ」
こりゅっこりゅっと内部の膨らみを指の腹でなでなでされ、ノエは快楽に悶える。
「あっひぃんっ、よしよしされるの、きもちぃいっ」
「ノエの蕩けた顔可愛いよ、もっと気持ちよくなっていいからな」
いつの間にか指を増やされ、中を広げながら敏感な箇所をぐりぐりと擦られる。腸壁が悦ぶように男の指をぎゅうぎゅうと締め付けた。
「あっあっ、ちゅう、したいっ、口の中もよしよししてっ」
口を開いてキスを催促すれば、すぐに応えてくれた。
「舌を出してごらん、ノエ。よしよししてあげるよ」
「んっんっ、はっあっ……」
伸ばした舌を、舌でなでなでされる。れろれろと舌が絡み付き、そしてちゅるっと甘やかすように吸われる。
わがままを言っても怒られないし、拒まれない。
子供の頃から、ノエは一度もわがままを言わなかった。言えなかった。言えば叱られるだけだとわかっていたから。
けれど彼は決して否定することなく優しくノエのわがままを叶えてくれる。可愛いと言って受け入れてくれる。
それが嬉しくて、ノエは際限なく甘えてしまう。
とろとろに甘やかされる快感を覚えてしまった。
「んっちゅっ、ちゅぶっんんっ」
「はあっ……気持ちいいかい、ノエ?」
「あんっあぁっあっ、きもちぃっ」
男はノエの口内を舌で掻き回しながら、中に埋め込んだ指でぐりゅんっと膨らみを抉った。
「んっんっ、ん゛ん゛~~~~っ」
ノエのぺニスから、またぴゅくっと精液が噴き出した。
「んぁっ、あっ、触られてないのに、出ちゃった……っ」
「精液が漏れるくらいここが気持ちよかったんだな」
「んひぃんんっ」
ここ、と言いながらごりごりと膨らみを押し潰され、ノエは鋭い快感に悲鳴を上げる。
「すごいぞ、ノエ。ノエは優秀だ。たくさん気持ちよくなれて偉いな」
「んへへ……ほんと? のえいい子?」
「ああ、もちろんだ」
即答されて、ノエははにかむ。
「のえなんでも頑張るから、もっといい子いい子して……」
「よしよし、じゃあもっともっと気持ちいいことをしよう」
にゅぽんっと、後孔の指が引き抜かれた。
切なく収縮するそこに、指ではない、熱くて太くて硬いものが押し当てられる。
ノエは無意識に、それを受け入れようと自ら両脚を広げ身を差し出した。
「ふふ、ノエは本当にいい子だ」
愛おしむように頬を撫でられ、胸がぽわっと温かくなる。
ぼうっとしているノエの後孔に、ぬぐ……っと熱塊が押し込まれた。
「あっひっひっ、はっあぁっあっあうっ」
ぐぐぐぐ……と埋め込まれる剛直に体内を圧迫される。直腸を熱くて硬い楔に擦り上げられる快感と、慈しむように頬を撫でられる感触と、何度も名前を呼んでくれる優しい声はノエに堪らない愉悦をもたらした。
やがて男の腰の動きが止まる。
「大丈夫か? 頑張ったな、ノエ。いい子だな」
「えへっ、んっあっあっ」
「ノエの中はすごく気持ちがいいよ。一生懸命俺のものに絡み付いて、気持ちよくしてくれる。ありがとう、可愛いよ、ノエ」
「んへへっ、へあっんっんんっ」
何度も何度も労られ褒められ、自然と笑みが込み上げる。
「頑張ったノエを、いっぱいよしよししてあげような」
「んひっひっあっああぁっ」
ずりゅっずりゅっと咥え込んだ剛直が内壁を擦りはじめる。敏感な膨らみを硬い出っ張りで引っ掛けるようにごりっごりっと刺激され、ノエは強烈な快楽に襲われた。
「はひぁっああっひっひあっあっあひぃんっ」
「よしよし、よしよし、気持ちいいな、ノエ」
「ひはぁあっあっ、きもちいいぃっ、よしよししゅごいぃっ、あっいくいくっ、いっちゃうっ」
「我慢しなくていいんだぞ、ほら、イッてごらん」
「んひぃいっ」
ぐりゅうっと膨らみを押し潰され、ノエは絶頂を迎えた。ぺニスからはもうほんの少しの精液しか出なかったが、快感は強烈で全身が痙攣する。
「すごいな、ノエの中、ぎゅうって締まって気持ちいいよ」
「あっあっ、うれひっ、もっと気持ちよくなって、のえの中、いっぱいよしよししてぇっ」
「可愛い、ノエ、ノエ」
ぐちゅっぐちゅっと剛直を抜き差しされ、繰り返し内壁を擦られる。
乳首も指と舌でたっぷりよしよしと撫でてもらった。
どろどろと蕩けてしまいそうなほど気持ちよくて、もう気持ちいいということしか考えられない。
心も体もこれ以上ないくらいに甘やかされ、ノエは至福に包まれる。
何度絶頂に達したのかももうわからない。ノエの体は限界を迎えようとしていた。
「はっ、ひっ、んっ、くひぃっ……」
「ノエ、もう少しだけ頑張ってくれ」
「んっんっ、がんばるぅっ、あっひっひあぁっ」
男はノエの腰を強く掴み、絶頂へ向かって剛直を一心不乱に出し入れする。
やがて、低い呻き声と共に体内で熱が弾けるのを感じた。
「んあぁっあ~~っ」
粘膜に熱い体液を浴び、ノエはぶるぶると体を震わせた。
息も絶え絶えのノエの頭を、男は労るように撫でてくれた。
「よく頑張ったな、ノエ。いい子だ。もう眠っていいぞ」
「ぁ、ん……」
なにか言葉を返したいのに、なにも言えないまま意識が遠ざかっていく。
頭を撫でられる心地よさにうっとりと身を任せながら、ノエは静かに眠りへと落ちていった。
翌日目を覚まし、隣にいる人物を見てノエは声にならない悲鳴を上げた。
カリストが、眠っている。ノエも彼も全裸で、同じベッドの上にいる。
混乱する頭で状況を整理した。昨日のことは思い出せた。団員達に襲われて酒と怪しい薬を飲まされた。そして多分助けられてここに運ばれたのだろう。問題はその後だ。自分の失態は記憶にしっかり残っている。相手が誰かもわからないまま、甘えまくった。変なことをたくさん言った。快楽を貪り乱れに乱れ痴態を晒した。
カリストは、きっと薬とアルコールでおかしくなったノエを放っておけなかったのだろう。だからああして慰めてくれたのだ。一応、ノエは彼の部下だから。
全身から血の気が引いていく。
なんてことをしてしまったのだろう。それでなくても嫌われているのに、あんなみっともない姿を見て、更に呆れたに違いない。軽蔑されただろう。
いつまでもここでぼうっとしている場合ではない。早く立ち去らなければ。カリストが目を覚ましてまだノエが居座っていたら、不快に思われてしまう。嫌悪を浮かべた目で睨まれてしまう。
彼に厭われるのが怖くて急いでベッドを下りようとして、下半身に力が入らず滑り落ちた。思い切り床に体を打ち付ける。痛みを無視して這いつくばってでもここから離れようとしたとき、「なにしているんだ」と後ろから声が聞こえて心臓が止まりそうになった。いっそ止まってくれた方がよかった。
謝らなくては。でもカリストはノエの顔などもう見たくもないだろう。声も聞きたくないと思っているかもしれない。ならばこのまま出ていった方がいいのかもしれない。
ガクガクする下半身に力を入れて前に進もうとするが、その前にひょいっと抱き上げられた。もちろんここにはノエの他にカリストしかいないのだからカリストがノエの体を抱き上げたのだろう。けれどノエは怖くて彼の顔を見られず、俯いたまま身を縮めていた。
じっとしていると再びベッドに戻され、そっと優しく横たえられた。
「体が辛いんだろう? 無理に動こうとするな。危ないだろう。どこへ行こうとしたんだ? トイレか? それなら俺が連れていってやるから俺に言え。それとも喉が乾いたか? 水なら俺が持ってきてやる」
甘い声音で労るようなことをつらつらと言われ、ノエはびっくりして思わず顔を上げてしまう。すると、声と同じくらい甘く蕩けた瞳でこちらを見つめるカリストと目が合った。
「ん? どうした? なんでも言ってみろ」
「ぁ、の……」
頭が混乱する。どうして彼はそんな目で自分を見るのだろう。どうして優しい言葉をかけてくれるのだろう。
「僕、帰らないと……」
「帰る? どこに?」
「え? あ、あの、兵舎の、自分の部屋に……」
「今日から、ここがお前の部屋だ」
「へっ? で、でもここは、団長の……」
「お前には騎士団を退団してもらう」
はっきりと告げられた言葉に理解が追い付かない。役に立たないから辞めろということだろうか。しかし、ノエが自分の意思で辞められるのならとっくに辞めていた。
「でも、あの……」
「お前の父には俺から話す」
「っ…………」
「もうお前を家には帰さない。仕事なら、俺の書類仕事を手伝わせる。ずっと俺の傍にいろ。ここから出るな」
一方的にあまりにも勝手なことを言われている。けれど彼の声音はやはり優しく、ノエを見つめる瞳はとても柔らかい。
騎士を辞めろと言われて疎まれていると思ったのに、傍にいろと言われて困惑する。
なにも言えないノエの頭をカリストが撫でる。昨日、何度も撫でられた。優しいその感触は昨日と全く同じで、やはり相手はこの人だったのだと改めて実感する。
「俺に囲われるのは嫌か?」
「ぁ…………」
「嫌だと言うなら、監禁するしかないな」
嫌なことなどなにもない。ただ、わからないだけだ。
「どうして……」
「お前が好きだからだ、ノエ」
告げられた言葉に、目を瞠る。
わかりやすく驚くノエを見て、カリストは苦笑を浮かべた。
「ずっと好きだった。一目見たときから」
「う、うそ……」
はじめて顔を合わせたときのことは今でもはっきり覚えている。ノエを見た瞬間、思い切り顔を顰めていた。
「可愛くて、可愛がりたくて堪らなかった。だが、団長である俺が一人の団員を特別に可愛がり贔屓することなどできない。だから、必死に自分の気持ちを抑えてきた」
頭を撫でていた手がするりと滑りおり、今度は頬を撫ではじめる。まさに、可愛がっていると言えるような手付きでノエを撫で回す。
「ずっとこうしたいのを耐えてきた。だが、昨日お前が襲われているのを見て我慢できなくなった。誰にも触れさせたくない。俺のものにしたい。俺だけが可愛がって、誰の目にも触れさせず閉じ込めてしまいたいと、その欲求が抑えられなくなった」
「…………てっきり、僕は団長に嫌われていると……疎まれているのだと、思っていました……」
「周りからそう見えるように振る舞っていたからな。そうしないと、お前を可愛がりたくて仕方ないという気持ちが抑えられなかったんだ」
「可愛がりたい、なんて……」
別にノエの容姿は可愛くはない。女の子らしいわけでもないし、美少年でもない。至って平凡だ。
「僕は、可愛くなんてありませんよ?」
「そうか。でも俺には、お前が堪らなく可愛く見えるんだ。閉じ込めて自分だけのものにしてしまいたいくらいにな」
そう言って愛おしそうにノエを見つめるから、どうしていいかわからなくなる。
確かに、なにを可愛いと思うかは人それぞれだけれど。
「可愛いな、ノエ。頬が赤くなってる。恥ずかしいのか?」
ああ、この声だ、とノエは思う。この蕩けるような甘い声で名前を呼ばれると、もう身も心もぐずぐずになってしまうのだ。
「だんちょ……」
「目が蕩けてきたな。可愛いって言われて嬉しいのか、ノエ?」
「ぁ、う……」
「可愛いノエ、これからは俺がたっぷり可愛がってやろうな。ノエは可愛がられるのが大好きだろう? とろとろに甘やかして、俺なしでは生きていけなくなるくらいたくさん可愛がってあげるよ」
甘やかされ可愛がられる喜びを知ってしまったノエは、もう彼の言葉に逆らうことなどできなかった。
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