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EP.39

 自分は常に長時間勤務で一緒にいられる時間がどうしても限られてしまうから、帰ってくるなり海を求めてしまう。  海もそれを許してくれて、愛してほしいと自ら強請ってくる。だから、歯止めが効かない。  本当はセックス以外もしたいけれど、快楽を覚えたての頭ではそれしか考えられなくなってしまう。少しでも誘惑されてしまえば最後、自身の限界を超えて搾り取られてしまうのだ。 「海くん、もう」 「えー、まだまだ足りないのに」  調べたこともないから知らなかったが、どうやら自分のそれは平均よりも大きいらしい。海はすっかり嵌まり込んでしまったようで、休憩したいと漏らす泉帆の上に背を向けて跨ったまま先端の方だけを埋め込み喉を鳴らすように喘いでいた。 「流石にちょっと、疲れたからさ」 「やだやだ、もっとほしい」 「いや、もう俺の元気がないっていうか……」 「こっちはまだまだ元気みたいだけど?」  海と一緒にいるだけで湧き上がる性欲が止められないことはここ数日で本人も理解できているはず。ただそれを言えば本当に死ぬまでこの子は止まらない予感がする。  泉帆は、つうと海の白い肌を指で撫でた。 「セックスするんじゃなくて、海くんのこと抱き締めて寝たいんだけど駄目?」 「……もー、しょーがないなぁ。でもまだ足りないから、あと一回だけ中で出してね」  語尾にハートマークがついていそうなほど甘い声。海はその場でゆさゆさと巨躯を上下に揺さぶり、柔らかい尻の肉がバウンドして弾むのを見せつけるかのようにして泉帆を絶頂へ促した。 「あ、ぁ、あぁー……っ」  海の身体でしかもう勃起できない。むっちりとした自分よりも大きな男の身体。他の男とは違う、艶かしくも見える脂肪と筋肉でできた柔らかな曲線美。  思考を焼き切ってくる甘い声も、常に柔和な雰囲気を醸し出す垂れ目も、先端が割れた特徴的な舌も。その全てが泉帆の性欲の対象となり、他の要素全てを圏外へと排除する。 「もう、海くん以外で勃つ気しないや……」  散々搾り取って満足したのかいそいそと横に寝転んできた海を抱き締めながら言えば、海はむっと表情を歪めた。  その拗ねたような顔だって可愛い。ほんの少し前までは、思ったことさえなかったのに。 「おれ以外でしようって考えてたの?」 「そういうことじゃなくて、君の全部が魅力的だからもう君しか見れないやってこと」 「おれ以外見ようなんて選択肢まだあったんだ?」 「ないよ。俺には君だけだって改めて思っただけ」 「……んふふ、そっかぁ」 「だから、家の中でこうしてセックスだけするんじゃなくて、色んなところ行ったり、……色んなもの見たり、できたらなって」  流石に24時間勤務の後の行為は疲れてしまい、眠気が襲ってきた。服を着る余裕もなく、海のことは抱き締めたまま落ちてくる瞼を閉じないように開ける。  そんな泉帆に、海はふふと笑い背中をぽんぽんと撫でてきた。 「もう眠いでしょ、おやすみ。また起きたらお話しようね」 「うん……」  8歳も下の男の子に甘やかされるように寝かしつけられ、泉帆は半ば気絶するかのように眠りへと意識を手放してしまった。  インフルエンサーの海とは、若者が集まる場所には行けない。海が見たがるものを一緒に見ることはできても、恋人同士での距離感でいることはできない。  それでも、泉帆は恋人らしいことをしたかった。ずっと過去に囚われ、その場限りの愛を受けて生きてきた海を、自分なりに愛してあげたいから。

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