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第1話

 恋愛がわからない。その言葉で乗りきれなくなったのはここ数年の事だ。  現在高校2年生。友人は続々と彼女を作り始め、付き合っては別れ、また隣のクラスの女子と仲を深めてを繰り返している。もう間もなく受験生になるというのに、随分とお気楽な事だ。  初めて告白をされたのが確か小学4年。あの頃は良かった。気持ちを伝えたその事実だけで満足する子ばかりだった。  しかし中学生にもなれば、誰と誰が付き合っているだの誰が誰に振られただのと、日常的に教室のどこかで囁かれるようになるのだ。 「いつも仲良くしてくれてありがとう。…本当はずっとヒロ君の事が好きでね、あの…もし私の事嫌いじゃなかったら付き合ってほしいんだけど」  中学1年の終業式だった。成績優秀、クラス委員の女子から登校して早々伝えられたその言葉は、俺の頭を混乱させた。  勿論彼女の事は尊敬しているし、好きか嫌いかと聞かれたら迷わず好きと答えるだろう。だが、それはあくまで友人としてであり、恋愛対象として見ているかと言われればそういう訳ではない。“嫌いじゃないなら”の言葉に救われ、そこで俺は初めて彼女という存在を持つ事になる。  しかし、その程度の気持ちでは当然うまくいく筈もなく。 「私の事、好きじゃないよね」  同じクラスの女子数人を引き連れて問い詰めて来た彼女に、何も言い返す事が出来なかった。  それで良いと言ったのはお前だろ、とでも言い切れる冷酷な人間であったならばよかったかもしれない。 「嬉しかったよ。私と付き合ってくれてありがとう…」  今にも泣きそうになりながら必死に言葉を紡ぐその子に、手すら繋いでやらないまま別れを選択させた事を酷く悔やんだ。彼女が俺をどれほど好きでいてくれたのか、震えた優しい声色が教えてくれたから。  俺の学校生活は、そこから徐々に歪んでいく。

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