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第2話

あれから数日がたち、何事もなく過ごしていたある日。いつものクラブでいつものメンバーが5人ほど揃いつつ飲んでいた。 「あれ、そーた、どこいくの?」 突然席を立つ爽太に蓮は即座に声をかける。 「ん〜?最近俺がハマってるやつあんじゃん?あれ慶太郎が始めたらしくて教えてやってんの♪」 てことで先帰るわ!と意気揚々と帰る爽太。だから今日アイツいねえんだななんて謙や和哉が呟く中、一言も声を出せずにいた。 それから1週間がたち、爽太はすっかり慶太郎といることが当たり前になっていた。大学の授業の空きコマなどを使いゲームを進めているうちに2人の関係も深くなっていた。 今日も2人でクラブに行き、爽太は最近癖になりつつあるオレンジカクテルをがぶがぶと飲んでいた。 「ねぇ爽太、ギャンブルやってみようよ」 「..お〜、いいな、ちょっと面白そうだもんな〜」 慶太郎が後ろにあるギャンブルを指す。もう既に出来上がっている爽太はよろよろと立ち上がりにんまりと笑う。 「ふふ、酔い過ぎだよ、..ほら肩貸すから..っ」 「あ〜、ありがとう..」 フラフラと立つ爽太を見て即座に自分の肩に爽太の腕を回し支える慶太郎。そのまま2人はギャンブルの席へと向かった。 「..よっしゃ〜!また勝ったぜ〜!」 「..うぇ〜まじか....、負けた...」 計5回、ブラックジャックをし続けていた。勝敗は見ての通り1-5で俺が勝っている。 「お前、こういうの弱いタイプなんだなぁ〜!」 「くそ...!最後にするから、もっかい!」 「え〜、どうしよっかなぁ〜」 気分が良くなった俺は普段散々遊ばれている慶太郎をここぞとばかりにいじめ倒した。今だって分かりきっていることを言って焦らしている。 「..じゃあ、シークレットゲームにするからさ!」 予想外の言葉に思わず少し酔いがさめる。けれどいつもの飄々とした態度とは真逆な慶太郎を見て爽太はますます乗ることにした。 「しょ〜がね〜な〜」 今度も勝ってしまうんだろうななんてワクワクと余裕が混ざりあった状態でディーラーの動きを待った。 「..負けた.....」 「ふふ、やった〜!」 結果は散々。先程までの勝率が嘘のように大敗してしまった。 シークレットゲームは秘密を貰うかどうかは勝者次第。つまり俺らの中で勝っても負けても大した痛みはない。 「..じゃあ、帰ろうぜ」 かなり酔いと興がさめて慶太郎の腕を掴み帰ろうとする。 「まだだよ」 「..え....?」 俺が掴んだ腕をさらに掴む慶太郎。振り向くと見たことのないほどの笑み。少し震えた。 「.....まだお前の秘密聞いてね〜もんな」 慶太郎は人が変わったように舌を出し、口調も様変わりした。 「...っ、な、んで...」 「...あ〜、ごめんな?俺嘘つくの得意だからさぁ〜?」 絶望。足元を救われるとはこのことか。こいつは俺にわざと勝たせて気持ちよくさせてシークレットゲームに誘い込んだんだ。それだけじゃない俺が好きなゲームをやり始めたのだって、1週間前から俺に酒を飲ませたのだって。 「.......なんで.....信じてたのに...っ」 久しぶりに酷く傷つけられて涙が出る。力が抜けて汚いなんて思っていた床に座り込む。 「...かわい〜顔..、だけど残念、俺はお前を従わせなきゃなんねえからさ」 爽太の顎を掴んで自分の方を向かせる慶太郎。近づくとわかる強いタバコの匂い。これ、カズが1番ヤバいやつが吸うもんって言ったやつだ。 「な、んで..?」 「蓮だよ」 サッと血の気が引く。ヒュゥと喉から音が鳴る。 「...まさか、っ」 「そのまさか、..俺は蓮をギャンブルに引きずり出して手中に収めたいからさ」 酷く頭痛がした。蓮、俺の大事な親友。俺ぐらいしか友達居ないのに今日まで蓮の誘い全部断ってた。そのツケが今回ってきたってことか、最悪の形で。 「そ、そんなの許されるわけねぇだろ!」 とにかく自分が今言えることがそれしかなくてただ吠える。叫んだところで今更無理だとわかっているというのに。 「お前が許さなくてもルール様は許してくれるんだからさぁ?...ほんと人生って、チョロいよなァ...?」 慶太郎は全て掌握しているかのように爽太を見下して舌なめずりをした。

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