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【野の花冠の王子様番外編】sweetなsweets
俺は確実に愛されている。
もちろん俺には超能力も無いし、かと言って誰もが自分を愛するはずだ。みたいなナルシストでも断じてない。しかしこれについては完全にクロだという自信がある。
「今日はパンケーキにしたよ」
そう言って出されたパンケーキは3段だし、その上には生クリームとカットフルーツが雪崩のようにかかっているし……。
紀伊さんがキッチンに戻ると一緒に研修を受けている斎藤が「ヒュー」と下品な口笛を吹いた。そりゃあ俺だけ男だから量を多くしてくれているんだろう。しかし生クリームの雪崩の中で遭難したハート型のイチゴが大量に『こんにちは』しているし……。
「紀伊さん可愛いよねーー」
福島がにやにやした顔で俺のパンケーキをフォークでつついた。
「やめろよ」
この愛の塊は俺だけが食べていいやつだ。お前らのは俺のついでのやつだろう。没収したいくらいだ。
一緒に研修を受けている女子全員にもバレている。気づいて無いのは本人だけだ。まあ、予防線になって俺としては好都合だけど。
戻って席に座ると紅茶を飲みながらチラチラこっちを見てるし、大体口つけてもちっとも飲んでないし、ちょっと黙り込んでみるとすっごい不安そうな顔になってソワソワしてるし……。
「……おいしーです」
言うと、めちゃ笑顔になってるし。
あーー可愛い。なにこの35歳。もうどんだけだよ。
最近は朝早めに来てるけど毎日俺のために軽食を用意してくれてる。
『どうせ自分の作るついでだから』
……と言ってたけど、これも嘘。最初の頃『朝ご飯はほとんど食べないよーー』と自分で言ってたのすっかり忘れてるし。
あーーどうしてくれようかな。
この天然ちゃんを脅かさないようにうまく捕まえないと。
どうやって俺のものにしよう。捕まえたら健全な少年に花の個展パンプに載っている男のプロフィール写真で何度も性欲処理させた借りを返してもらわないと。あーーこの真っ白いふわふわの生クリーム体中に塗ったくって舐め回したい。イチゴじゃなくて真っ赤な咲耶の乳首を齧りたい。
あ、やべ勃ちそう。
「紀伊さんおいしーですう」
福島がもう皿をカラにしていた。帽子専攻のこいつは丸い顔に丸眼鏡、ベレー帽を被っていて体型と相待って全体に丸感が強い。それ以上丸くなる気か?
「よかった。もっと焼こうか?」
「食べたいですーー!」
「私も食べたーーい!」
オートクチュール専攻の斎藤も手をあげる。ちょい昔の黒いビジュアル系風の容貌がパンケーキに似合わねーな。というかこの花畑みたいな工房に全く似合ってない。
「ちょっと待っててねーー」
こいつらホント図々しいな。
「……兼子君はもう食べないの?」
ブクブクに太ろうとしている女子達の前に追加のパンケーキをおきながら上目遣いで聞いてくる。あーー食べたいよ。咲耶が食べたい。頭から丸齧りたい。
「……食べたいです」
このふわふわパンケーキで巻いて齧りつきたい。
「ほんと? じゃあ作ってくるね」
嬉しそうにまたキッチンに戻っていった。
「答えてあげたらーー超可愛いじゃないーー?」
そんなことは解ってる。お前らは冗談で言ってるかも知れないが、こっちは答える気満々だし、もう体制は万全だ。
2人はオヤジのように大口でゲラゲラ笑っている。どっちが女子だ。少しは見習えよ。紀伊さんの愛、全部受け止めて脂肪として蓄積させればいい。
「はい。出来たよ」
目の前に出されたパンケーキは今度はチョコレート仕様になっていた。ココア生地のパンケーキに生クリームとチョコレートソース、カットバナナとピューレがたっぷりがかかっている。
「あーー兼子君だけずるーーい!」
「ごめんねーーチョコレートも余ってたなって思いついちゃって。食べれそうならみんなにも作るよ」
「これ以上丸くなったら転がって帰る事になるぞ」
「兼子サイテーー! それよこしなさいよ!」
「ダメだ」
盗もうと近づいてきた福島のフォークをフォークで叩き返した。
「仲良くて良いねーー」
なんて羨ましそうにこっちを見ている。俺が仲良くしたいのはあなただけです。まあ近いうちにすっげーー仲良くなりますけどね。
チョコレートソースまみれもいいなーーバナナか。咲耶ってほんとに付いてんのかな? 咲耶のなら丸飲み出来る。あーー妄想で鼻血出そう。もう早々に手に入れないとホント体持ちそうもない。
fin.
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