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それって最強.5
居た堪れなさにオレは突っ伏したまま両手で頭を抱えた。ちょっとした籠城だ。赤くなってるだろう頬と、潤んでいる目。どっちを隠すべきか分からないからこうするのが手っ取り早い。ついでに耳もふさいで、みんなの話すオレの恋バナから逃げようとした、それなのに。
オレは随分と身勝手な耳を持っていたらしい。ふと零されたショウのひと言がやけに輪郭を持ってオレに届いた。
「あ、野球部帰って来たみたいだね」
「っ、マジ!?」
ショウの言う通り、談話室の入り口の前を大きなエナメルバッグを抱えた野球部のみんなが次々と通っていく。クラスメイトが通ったのか手を振るショウの影に隠れるようにしがみつくと、タクが呆れたようにオレを見る。
しょうがないだろ。だってまだ凌平と顔を合わせる心の準備が出来ていない、これっぽっちも。
あんなに早く帰ってきてほしかったのに、今はただただ怖いのだ。
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