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それって最強.9
冷やかすな、とどうにか取り繕った凌平は、オレを部屋で待つと言って談話室の出口へと向かう。この状況から脱せるとひとまず安心したし、オレもすぐに戻ろうと誓う。
けれどタクが凌平を引き止める。
「なあなあ、凌平クン」
「ん?」
「アイツ、アンタのことマジで気に入ってるみたいでさ。馬鹿だけどいいヤツだし、“うちの”純太のこと、よろしく頼むわ」
「…………アンタに言われなくても」
テーブルの下のオレにタクと凌平ふたりの表情は見えなくとも、どこか棘があるタクの口ぶりと、敏感にそれを拾う凌平に空気がピリつくのが分かる。どちらともとそれなりの時間を過ごしてきたから。
「はは、凌平クン顔こっわ!」
「タク感じ悪すぎ、やめろ……凌平くんごめん、タクは純太のこと気にかけてるってだけなんだけど……言って聞かせとくから」
「はぁ? ショウお前は俺の母ちゃんか」
「ガキくさいことするからだろ」
「へえへえ、すみませんね」
途端に始まるタクとショウの掛け合いに、引き止められていた凌平が少し笑う声が聞こえた。それに空気が和んで、わだかまりも残らずに済みそうでオレもほっとする。
けれどそれも束の間になったのは、凌平がとんでもないひと言を告げたからだ。
「ショウ、だっけ。別に怒ってないし大丈夫、ありがとな」
「ほんと? よかった」
「お互い純太が大事ってのはソイツと同じだもんな。まあ、絶対負けないけど」
「……わお」
ええ、凌平、なにそこ張り合ってんの……オレだって、オレだって凌平を大事に想う気持ちは誰にも負けないけど! でもそれは、凌平に恋をしていると気づいたオレだからで。
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