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それって最強.10
ぶわりと体温が上がった体を、ひゅうと口笛を吹いたユウゴのつま先がツンツンとつついてくる。さっきから色んなことが起こりすぎていて、オレはそろそろキャパオーバーだ。
「じゃあほんと部屋戻る。邪魔した」
「おー、じゃあな」
タクも含め全員が凌平にバイバイと手を振っているだろうことに胸をなでおろす。凌平が戻って五分くらいしたらオレも行こうかな。
そう思ったのに、凌平がとんでもないことを言い放つ。談話室の出入り口でしゃがんで、オレとしっかり目を合わせて。
「純太ー。はやく戻って来いよ」
「へ……っ、りょ、凌平おま、き、気づいて、」
「じゃあな」
澄ました顔に熱っぽい瞳をたずさえて、ひらひらと手を振った凌平が去ってゆく。金魚みたいに口をパクパクするしか出来ないオレは、ショウに引っ張り上げられた。
どうにか椅子に腰を下ろして、出入り口を見やったままのオレにみんなが次々と声をかけてくれるけど、それでもオレの頭は凌平で頭がいっぱいだ。仲間からの勇気に変えられそうな言葉たち、ちゃんと受け取りたいのに。
「脈ありじゃん、タク相手に嫉妬してたよな」
「な! バチバチだったぞ」
「ほんとタクは余計なことするよね……でも俺もユウゴに同意だな」
オレは駆け出して、どうにか一度立ち止まって振り向く。三人が突き出してくれている親指を立てた拳に、鼻を啜りながら同じポーズを返した。
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