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 別に僕たちは、仲が悪いわけじゃない。だけど、社交的な奏汰と内気な僕とは、顔が同じでも性格は正反対だった。  奏汰は人気者で、親からも可愛がられていたけれど、内気で気弱な僕は、いてもいなくても変わらない存在だったのだ。  比べられている方がまだマシだと思うときがあるぐらい、僕の存在は空気そのものだった。  だけど、そんな僕の存在を知ってから、手を差し伸べてくれたのが裕貴さんだった。  僕が映画が好きだと知ると、オススメのDVDを貸してくれたり、チケットをくれたりした。行く相手がいないのに、二枚用意してくれたのには、正直辛かったけれど……  それでも、色々と目を向けてくれるだけで、僕からしたら人生が一転するような出来事だった。だけど、奏汰からしてみれば、あまりいい気はしなかったと思う。  双子という他の誰よりも深い繋がりを持つ僕たちは、言わずとも互いの事が手に取るように分かる。だからこそ、僕が裕貴さんを好きだという気持ちを奏汰が気付かないはずがなかった。  だから僕が裕貴さんと仲良くなるに従って、家に連れてくる頻度が減っていったのも、仕方がないことだった。  あの事故がなかったら僕は、裕貴さんと話すどころか、一生会うこともなかったかもしれない。  そして今は、奏汰だと思って、裕貴さんは僕と接している。きっと僕だと気付けば激怒して、もう二度と会ってはくれなくなるだろう。それどころか、僕の事を一生恨むかもしれない。  だから僕の初恋は、叶わないも同然だった。 「ねぇ、知ってる? 初恋って、絶対に叶わないんだよ」  僕は奏汰の遺影に向かって告げる。  初恋が叶ったのだと、喜ぶ裕貴さんの顔が脳裏を過っていた。

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