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奏汰の葬式を終えてしばらくして、裕貴さんが目を覚ました。僕はそれを聞いて、いてもたってもいられず、病院を訪れていた。
最初は、真実を言おうと思っていた。奏汰は死んだのだと。
それなのに、裕貴さんが僕の顔を見るなり「良かった」と言って、涙ながらに抱きしめてきたのだ。
裕貴さんの温もりと、僕を愛おしそうに見つめる目。
今まで、想像でしか得られなかった彼の体温や香りを知って、僕は否定することが出来なくなっていた。手放したくないと、思ってしまったから。
そこで僕はいけないと分かっていても、奏汰のふりをした。死んだのは奏斗で、奏汰は無事だということにしたのだ。
あの日は悪戯で、入れ替わっていたのだと言って――
もちろん、許されることじゃない。いずれはバレると分かっている。それでも、僕はどうしても抑えきれなかった。
だって、僕の初恋は裕貴さんだから。
彼が初めて家に来た日。奏汰と僕を間違えて、後ろから抱きしめてきたあの時――
驚いて固まる僕に、裕貴さんは幸せそうな顔で笑っていた。自分より年上なのに、その子供みたいな無邪気さが僕には眩しくて、それから初めて感じた温もりに、胸がドキドキしていた。
だけど、奏汰の恋人がこの人であることにすぐに察しがついてしまい、僕は失望と羨望に胸が張り詰めていた。
そこに奏汰が現れて、裕貴さんが僕たちが双子である事を知った。
裕貴さんは驚いていた。それでも悪びれる様子も無く、「そんな話聞いてないから、俺は無罪だよね」と言って、拗ねる奏汰を宥めていた。
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