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 余り驚いた表情はしていないが、何か考え込んでいる。  確かにあの日、襟にフリルのついたブラウスに、男子が着なさそうなカーディガン。レース仕様のフレアパンツを穿いていた。天音が選んだ服だ。彼は何故かそういう服を着せたがる。さすがにスカートではないものの、女の子のような格好かも知れない。  カンナも聖愛もデザインは違うが、初等部から制服があり、男子はブレザーに長ズボンまたは半ズボンという格好だ。当然オレも男子の制服を着ている。それで、初めて気がついたというわけか。 「きみのお母さん、ボクのこと男だって言ってなかった?」 「あの日、友だちの子どもが来るって……カンナに入学するから仲良くしろって、言われた。男とも女とも言ってなかった。もしかして、母さんも女だと思ってたのかも」 「いやいや、まさか」 「ああ見えて、かなり抜けた人だから。お前のこと『ちゃん』づけで呼んでたしな」  ぽりぽりと頬を掻く。 「お前のとこは俺のこと、なんか言ってた?」 「何も、ママ……お母さん、着物取りに行くからついて来いって」  もし事前に言われてたら、一緒に行かなかっただろうな。そう思ったが、彼には言えなかった。  それから、ふと思いついた。 「じゃあ……もしかして……この間、言ってたこと、からかったわけじゃなかったの?」 「んー?結婚しろってやつ?」  冬馬は顔を間近に寄せて、オレをじっと見る。 「なんで、俺がお前をからかうんだ?髪はキラキラしてて綺麗だし」  さらっとオレの髪に触る。 「瞳の色も宝石みたいだ。色白で唇ピンクで、口許にほくろってのもいい。涙ぽろぽろ流してるのも可愛くて、守ってやんなきゃって思った」 ( きみが泣かしたんだけど? )  そこはツッコミたくなったが、ずらずらと褒め言葉を並べられ、こっちの方が恥ずかしくなってくる。  ──昔から、冬馬は天然たらしだった。

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