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時間を心配することなく、一晩冬馬と過ごすのは去年の夏以来だ。さっきまで最悪だと思っていた誕生日が、あっという間に最高のものになった。
もうオレのことなんてどうでもいいんだとさえ考えていたのに、こういうところが冬馬らしくて、やっぱり嫌いになれない。
部屋に戻ると順番にシャワーを浴びる。冬馬から一緒に入るかと言われたが、あの時のことを思い出すと気恥ずかしくてやんわり断った。
冬馬と色違いの、Tシャツとハーフパンツのルームウェアを着るのも、なんだかドキドキしてしまう。意識しているのは、オレだけだろうけど。
「改めて、おめでとう。詩雨」
もう一度ふたりで乾杯をした。勿論ジュースでだ。
「ありがとう」
そう。その言葉だけでいい。食事もプレゼントもなくても、そういう想いのこもった言葉。それだけで嬉しい。
オレたちは、わあわあ大騒ぎしながらテレビゲームをしたり、適当に選んだテレビ番組を流しながら他愛もない話をした。もう、ふたりだけでこんな時間を過ごせることはないかと思っていた。
── ふと気がつくと、オレは冬馬の肩に凭れていた。
( あれ、オレ寝ちゃってた……? )
学校の後に此処に来たこともあってか、騒ぎ疲れて寝てしまっていたらしい。
( 冬馬も寝てるのか? )
静まり返った部屋にテレビの音だけが聞こえる。深夜枠の海外の映画だろうかと、しばらくぼんやりと眺める。
頭がはっきりしてきた頃には、大きめの画面の中でラブシーンが繰り広げられていた。何度も繰り返すキス。それは次第に濃厚なものになっていき、男が女の衣服を一枚ずつ剥いでいく。
わぁっと思わず声を上げそうになってどうにか押さえる。独りで見るならともかく誰かと一緒になんて、かなり気まずい。
冬馬が寝ていることを祈りながらそっと隣を窺うと、彼は熱っぽい眼で微動だにせず映画を見ていた。
ふっと小さく吐息が聞こえる。
( 興奮してる?冬馬でもこんなの見て興奮するのか )
そう思って改めて画面を見て、オレは気がついてしまった。性別は違うが、その女性がどことなく秋穂に似ていることを。
髪型。細い手足。小柄な身体。白い肌。男に触れられながらも、儚い笑みを浮かべている。
( ああ、そういうことかよ )
オレはスッと手を伸ばし、胡座をかいている男の中心に触れてみた。
思った通りだった。
冬馬がびくっとしてこっちを見た。
「何、勃たせてんの。あれ見て興奮した?」
オレは悪戯っぽく笑ってやった。彼は、えっ?と小さく声を上げた。
( なんだ、また、無自覚か )
そうだ。冬馬はまだ気づいていないんだ。秋穂に、欲を孕んだ想いを抱いていることを。或いは気づいていても気づかなかったことにしているのか。
「オレがしてあげようか」
前に言われたことをオレは冬馬に返してやった。今度は躊躇せず直に冬馬のに触れる。
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