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「でも、わざわざここまで来て」  更に言い募ろうとするハルの口を、オレは両手で塞いだ。先を言おうとして、言えずにもごもごするハル。 「ばーか。違うだろ。ここに来たのは、おまえの写真集の撮影だろ」  やや疑わしそうな表情をしながらも、こくっと頷く。  オレは手を離してやった。  そのまま黙ってオレの顔をじっと見ている。 「何?」 「俺って、まだ橘さんに似てますか?」 「え?」  その事については、二年前のクリスマス以来触れたことはなかったが、ハルの中ではまだ根強く残っていたらしい。  オレが、ハルに冬馬を重ねているということ。 「ん~~」  オレはハルの上から下までまじまじと見た。 「や、似てないかも」 「え」  ハルの顔がパッと明るくなる。 「オレのことが好きすぎるところがー」 「え~~」  オレがはぐらかしたと思ったのか、不満げな声を上げる。  オレは満面の笑みを浮かべる。 「ハルは、ハルでしかないよ」  これが正解。これが全て。 「シウさん」  ほ……っと吐息を漏らす。  どちらかともなく手を繋ぎ、指を絡める。  オレたちは再び、この大きな川の辺りを歩き始めた。  背格好。顔立ち。声。  髪色も今は地の黒のままのことが多く、冬馬と同じ色だ。  似ているといえば、似ているかも知れない。でも知らないうちに身代わりにしていたあの頃程、似ているとは感じない。  もしかしたら、最初からオレが思う程似ていた訳でもないのかも。冬馬愛しさに、そう見えていただけなのかも知れない。オレ以外の人が見れば、ちょっと雰囲気が似ているかも、と思う程度。  今は。  ハルはハルにしか見えない。  さっきハルに言ったことは、けして慰めでも何でもない。本心だ。  何年かあと、もし冬馬に再会したら、オレはきっとこう言うだろう。 「冬馬って、ちょっとハルに似てるよね」  と。  オレは心の中でくすっと笑い、絡め合った手にぎゅっと力を込めた。

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