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「………………」
「………………」
遙人に緩く抱かれながら、しばらく黙り込む。
何を考えているのだろうか。
ふうと吐息が漏れる。
「なに?」
「いえ……やっぱり、生のまましたかったなぁ、とか思って」
「えっ」
またしても、爆弾発言にオレは凍りつく。
遙人は手をオレの腹に滑らせ、ゆるゆると撫でる。
「この、誰も知らないシウさんの奥の奥で、出したかった」
「………………」
「いつか、いい? ね、詩雨」
最後は耳の内に息を吹き込むように、甘い甘い声で。
( そんな声で、言うことかっっ )
オレは彼の腕から逃れ、振り返ると。
バシャッバシャッバシャッ。
「うぁっ、なにっなにっ、シウさん、やめて」
遙人の顔を目がけて、お湯を見舞った。
ぬるめのお湯で良かったな。
「ふんっ」
オレは仁王立ちになって、遙人を見下ろし
た。
「ぶぁ~~かっっ」
**
遙人は、ストイックな顔に似合わないくらい、いつもオレへの愛の言葉をストレートに囁く。
逆にオレは、こんなチャラそうな外見に反し、気持ちを言葉にするのが恥ずかしい。
──── 遙人のこと、愛してる。
だから、遙人の愛の言葉も、甘くなる雰囲気も、本当はすごくすごく嬉しいんだ。
でも。
そういうのって、なんか、照れるだろ。
心臓が壊れそうなくらい、ドキドキしちゃうだろ。
だから。
ずっと、甘くなくて、いいんだ。
遙人も、ああやって、時々バカなこと言って、ぶち壊すし。
オレもつんけん言い返すし。
このぐらいの匙加減が、オレたちに似合いだろ。
オレはそう思う。
そうやって、ずっと一緒にいよ?
** おしまい **
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