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第6話
「それに、ダメって言っても無駄だよ?もう、父さんたちは説得してきたんだから」
いくつもいくつも零れ落ちる涙を指で掬いながら告げると、目をまん丸にした。
「ええっ!?大丈夫だったのか!?」
「うん。最初は、驚いてたけどさ…一生懸命説得したら、わかってくれた。まぁ、うちの親って変わってるしね。妙に、寛大なとこあるし?」
「そうだけど…」
「俺の留学費用も、ぽーんと出してくれるってさ。俺の方のじいさんが資産家で、ラッキーだよな」
「…おまえって…」
翔月は、呆れたように呟いたけど。
次の瞬間には、ふわりと微笑んだ。
春の陽だまりのような、大好きな笑顔で。
「いつの間にか、大っきくなっちゃって…あんなに可愛かったのになぁ」
どことなく悔しそうな声音に、つい笑いが込み上げた。
「俺だって、いつまでも翔月の後をくっついてたチビじゃないの。ちゃんと傍で見てないから、知らなかったんだろ?」
「むぅ…」
「そういう翔月は、全然変わってないよね?いつも兄貴ぶって、一人でぐるぐる悩んで、一人で勝手に結論出しちゃうとことか」
「う…すみません…」
「これからは、なんでも話し合って決めること!俺だって大人になったんだから!」
これから先はずっと
二人で同じ歩幅で歩いていくんだからさ
「うん」
翔月の大きな手が、俺の頭を引き寄せて。
コツンと、おでことおでこがくっついた。
「じゃあ、陸。早速一つ、提案があるんですが?」
「なんだよ?」
「…今すぐに、可愛い唇にキスしたい」
「っ…そういうことはっ、いちいち言わなくていいっ…!」
言いかけた言葉は、すぐ間近にあった甘い唇に吸い取られて。
一つに重なりあった俺たちを、窓から差し込む柔らかな陽射しが包み込んだ。
《End》
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