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第6話

 次の日から、悠哉は博人が迎えに来る時間よりも早く家を出ることにした。一緒に過ごせなくなるくらいなら、自分から離れてしまえば今あるこの胸の痛みから少しは解放されるかもしれないと思ったから。  それなのに、痛みは消えるどころか、どんどん増していく……。離れようとすればするほど、博人の顔が浮かんできてしまう。訳もわからずに避けられることが一番辛いって、自分が一番わかっているはずなのに、悠哉はそれを博人にしているのだ。  この気持ちが何なのか、本当にこのままでいいのか、答えは見つからなくて、それでも博人と吉川さんの一緒にいるところを見ると、やっぱり胸の奥がキュッと苦しくて、話しかけることすら出来なくて、ゴメンって言えなくって、今だってほら、すれ違う瞬間に顔を逸らしてしまう。 「もう限界! 悠哉、ちょっと来い」 「えっ、ちょっと……」  通り過ぎたと思ったら、思いっきり腕を掴まれた。そのまま向かった先は、いつも二人で昼食を食べていたあの場所だ。 「お前、一体どうしたんだよ⁉」 「べっ、別に……」 「何で俺を避けてんの? 俺、何かした?」 「別に、何も……」 「もう、訳わかんねぇって……」 「俺だって、自分が何したいのか、わかんない……」 「俺は、お前のことずっと親友だと思ってた。けど、お前は違ったってこと? ずっと一緒にいたのに、こんな一瞬で壊れるような関係だったってこと?」 「違うくて……。そうじゃなくて……」 「じゃあ、何だよ⁉」  一度も見たことのない切なげな顔をしている博人が、真っ直ぐに自分を見ていて、また胸がキュッと苦しくなる。  思わず左胸に手を当てて、悠哉はやっと言葉を口にした。 「ここが、苦しいんだ……」 「えっ?」 「博人が吉川さんと付き合うって知った瞬間から、ここがずっと痛いくて、苦しいんだ……」 「それって……?」 「たぶん……好きなんだと思う」 「好き……?」 「そう。俺の初恋……」 「その相手が、俺……?」  自分を指差して覗き込むように問いかけてくる博人に、悠哉は素直に頷いた。  認めたくなかった。これが恋だと認めるのが怖かった。まさか親友だと思っていた相手を好きになってしまったなんて、そんなことあり得ないって思いたかった。  でも、不思議なものだ。認めてしまえば、案外すんなりと受け入れられる。  だから、悠哉は顔を上げて真っ直ぐに博人を見た。 「俺、博人が好きだ」  そう笑顔で告げた。

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