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二人で媚薬編 13 元気のおクスリ

 媚薬、じゃなかったなんて。 「あっ……あ、ン」 「やっぱ、一緒にシャワー浴びた方が良かったね」 「あっ」 「中、まだ奥に残ってる。ごめんね」 「あぁっ、そこっ」  指が孔を広げると、確かに、とろりと奥から注がれた実紘のがこぼれ落ちてきたのを感じた。 「うん、こんな奥に出しちゃった。悠壱のおねだりがエロすぎて調子に乗った」 「っ」  媚薬じゃなかったのに、媚薬のせいにして、おねだりをして、けれどそのおねだりの甘ったるさも、いやらしさも全部、いつも通りなんて言われて、もう、どうしたらいいのか。  あんなに乱れたのに。 「あ、あっ」  柔らかく、セックスの余韻に浸った身体は奥まで突き立てられた指に喘がされて、もう、とろけるほど気持ち良くなってる。抱きしめててくれる実紘の肌に爪を立ててしまうほど。 「奥に出してって言われるとセーブできないんだ」 「あぁ、そこっ」 「俺、独占欲とか強いみたいでさ。悠壱のこと全部独り占めしたくてたまんないんだ。だから奥まで種付けしたくてしたない」 「っ、ん、ぁっ」  種付け、なんて単語ひとつで欲望が膨らむ。 「俺の、って、したくなる」  今、たくさんの人に求められている、たくさんの人が触れたいと思っているミツナも実紘も全部を独り占めしたくなる欲望。 「悠壱は俺の」  実紘の、だよ。俺の全部は、全部、実紘一人のものだ。この口も、身体の一番奥も、心臓だって、頭の中だって全部。 「大学の女とか、悠壱に色目使ってこなかった?」 「な、いっ、みんな、ミツナのファン、だよ」 「男は?」 「もっと、ない」 「こんなさ、なんでもできて、才能あって、頭も良くて、そんでエロい人とか、大学生の男なんてイチコロじゃん」 「あ」  あるわけないのに。 「悠壱」 「ん」  深いキスで舌を絡めながら、指が奥まで届いて、クチュリクチュリと中に残った白を掻き出す。たくさんしたから、たくさん注いでもらったんだ。 「悠壱」  奥に、悠壱のを種付け、してもらった。 「あぁっ……ん」  シャワーを浴びてリセットされた実紘の髪からも同じシャンプーの香りがする。その洗い立てで少しまだ濡れている髪を手ですきながら頭を抱えると、実紘が乳首にキスをしてくれる。唇で触れられて、喰まれるとたまらなく気持ち良かった。セックスでたくさん可愛がられたそこは、敏感になっていて、息を吹きかけられるだけでも、震えて感じてしまうくらい。それを舌で舐めてもらいながら、長い指に中を掻き乱されて、キュンキュンと締め付けてしまう。注がれたものも、この指も、離したくないと孔が切なげに締め付けてる。 「ん、あっ」 「悠壱」  その身体の奥をたくさん広げてくれた指が引き抜かれて、名残りおしさに、孔の口がヒクついた。甘ったるい声で何より愛しくて美しい名前を呼びながら、その孔を見えるように広げて。 「また、奥がいい。一番奥の、とこまで全部、欲しい」  額をくっつけ、小さな声でそう囁いた。 「全部?」  言ってよ、って顔をしてる。 「欲しいの?」  何をされたいのか、言って、って顔。 「悠壱」  一番いやらしく、卑猥に誘ってよって。  だから。 「ここ……」  誘った。  膝を抱えて、脚をいっぱいに広げて、一番恥ずかしいところを一番綺麗な男の目の前に晒した。 「実紘ので、犯して……あっ」  孔に切先が触れただけで、何か焼き切れそうなほど気持ちいい。 「奥まで来て、俺の、中、に、実紘の精液、欲、し……ぃ」  今日何度も抱かれた身体は大悦びで熱を咥え込んでいく。根本まで、全部、前立腺を押し潰すように突き立てられてく。 「俺のこと、実紘の、好きなように、めちゃくちゃに……して」  震えるほど気持ちいい。 「あ、あぁっ……あ、と」 「?」 「あと」  もう媚薬の効果は切れたけど。  実紘を独り占めできるのならなんでもするよ。誘惑もする。醜態だって晒す。本心だって。 「いつも一緒にいたい。俺がいらない仕事の時も」 「ないよ」 「あぁっ」 「悠壱がいらない時なんて、俺にあるわけないじゃん」 「あ、あ、そこもっと、突いて」  この熱に抉じ開けられたら、もう。 「いいよ」 「あぁぁ、そこっ、あ、あ、あ」 「悠壱のこと」  何もいらないんだ。実紘以上に欲しいものなんて。 「いくらでも、抱き潰してあげる」  ないんだ。  ジェットコースターは、苦手。  お化け屋敷は、苦手ではないけれど、好き好んで入ろうとは思わない。  怖いものなその二つ、だった。 「実紘! ここはまだ発進できないっ!」 「はーい。わかってるってば、マネージャー、ここは右方向の矢印が出るまで右折できない交差点でしょ?」  今も変わらず、二つ。 「そ、それにしてもっ、これはおかしくない、ですか?」 「あー?」 「ま、マネージャーである私が後部座席に座っていて、タレントであるミツナが運転って」 「いーじゃん。今後、ドライブしながら語る系のバラエティに俺出るんでしょ?」 「ちょ、わーーー!」 「あはは」  初めてマネージャーの叫び声聞いた。それにいつも冷静沈着なこの人でも焦ることあるんだな。 「出演依頼のあった、それ、ちょっと再検討をっ」 「えー、いいじゃん、出る。出たい。俺なんでもするよ」 「ね、熱心で、い、意欲的なのはいいことですがっ」 「マジでなんでも」  実紘はにっこりと笑いながら、とても楽しそうに急ブレーキをかけた。 「なんでもできる気がするんだよね。毎日、元気の出るお薬飲んでるから」 「は? なんですか? そのあやしいのは」 「ぷははは、悠壱がいれば俺は最強だからさ。あ、今度の悠壱が出る講義? の仕事の時は俺のスケジュール空けておてね。俺も行くから控え室で悠壱のこと待ってるんだぁ」  そして、マネージャーがジェットコースターにでも乗っているように戦々恐々としている中。  赤が青に変わる瞬間。 「ね? 悠壱。元気の出るお薬」  実紘が俺を引き寄せキスをした。キスが、薬なんだそうだ。これで徹夜で収録もこなせると、笑顔で言っている。 「よーし、出発進行ー!」 「ちょ、そういうのは人目のあるところではダメだとおおおおおお」  そんな元気のお薬を注入した実紘の元気な急発進に。 「うおおおおお、お、お、お」  マネージャーの大絶叫が車内に響き渡っていた。

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