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第16話

   「うっ! ぃ、痛っ、…っ」  ずっとチクリとしてたところが、急にギュッと握られたように痛み出す。  こんなのは知らない。  何? こんなに痛いの、初めてだ。  どうしよう…。胸が苦しい…。  息が上手く出来ない。空気を吸い込む度にズキズキと心臓を槍で刺された様な痛みがする。おまけに何だか凄く熱い。  「はっ、はっ、はっ、……た、すけ、」  短く息を吐きながら、誰か助けてとその場に蹲る。何だろう、これ。熱い…。熱でもあるのかな。やっぱり何処か具合が悪かったのかも…。  苦しい…、熱い……、だれ、か………。  「な、…なぉ …」  お願い………、 助けて、  「く、じょ…、くん たすけ、て…」  頬に玉砂利の当たる冷たい感触。ずっと苦しい胸を押さえながら、何処かで誰かが叫ぶ声が聞こえた。  「どうしたのっ!? しっかりして! ふ、双葉さんっ、き、救急車! 救急車を呼んでくださいっ!」  だれ、ですか?  ご親切に、感謝します。  ご迷惑、おかけして…、すみません……  「ーー…メガのヒートです! アルファの方は近寄らないでっ!」  ーーー…ああ、なるほど。  これが噂の、オメガの発情期ってやつか。    他人事のようにそう思いながら、暗い闇の中へ意識を落とした。  最後に脳裏に浮かんだのは…、あのヘタレポンコツアルファの顔だった。  ねぇ九条くん。オレ、ベータじゃないんだよ。知らなかったでしょ。だってきみ、いつも七央しか見てなかったもんね…。  バカは、どっちだよ。

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