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第15話

 ****  「…え? な、七央が九条家に招待された?」  そうなのよー、と七央の母である老舗旅館の女将さんは、頬を高揚させ喜びを隠し切れない様子でそう教えてくれた。  そろそろヒートも明けた頃かと思い、姉が焼いたクッキーを持って、七央と一緒に食べようと久住家に遊びに来た。ついでにあのチクリの原因の事も七央に相談しようと思って訪ねたのに、当の本人は留守だったのだ。しかもオレの知らないところで九条家から招待されていたと聞き、ずっと会えないままなのも重なって何故だか胸がモヤモヤとする。  二人に会えなくなってから、もう2週間が過ぎていた。おまけに連絡すら取れない。だからこうして会いに来たというのに…。  旅館の離れ家がある裏山に、いつの間にか足を向けていたらしい。  宿泊客の目を楽しませる為に造られた池の周りをトボトボと歩く。  池の畔に置かれた竹のベンチにポツリと座って、ゆらゆら泳ぐ錦鯉を眺めながらクッキーを食べた。摘み食いした時はあんなに美味しかったのに、今は何だか味すらしない。  七央と一緒に食べたかったな。姉ちゃん、ごめん。七央、留守だったから渡せなかったよ。いつ帰って来るのかも分からないんだって。  今まで七央がオレに黙って何処かへ出掛けた事なんか一度もないのに…。大抵は事前に相談されるか一緒に行こうと誘われる。それが今回に限っては、誘われるどころか相談すらなかった。  何で?七央。  どうして何も教えてくれなかったの?  チクリと、また針が刺さる。  七央がオレに内緒で九条くんに会いに行った。  ーーーチクリ、チクリ。  九条くん、酷い。幾ら振られて気まずいからって、家を使って七央を呼び出すなんて。何処までヘタレだよ。あのポンコツアルファめっ!今度会ったらただじゃおかないぞっ! …って。今度なんか、あるのかな?  ーーーーチクチクチクチク…  も、もしかしたらこのまま…。七央を返してくれないんじゃないかな?   まさか…、七央。   今頃はもう九条くんと、つ、番に……。  ーーーーーーズキン

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