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手持ちの中でいちばん美しい着物を着て、少ない荷物をかき集めてカバンに詰めた。
「身請けしてくださり、ありがとうございます。精一杯ご奉仕いたしますので、どうか可愛がってください……。って、こんな感じかな?」
鏡の前で、媚びをふんだんに盛り込ませた、精一杯の笑顔を作ってみる。いまいちしっくりこない。だけれども、もう身請けすることは決まってしまったのだから後には引けない。
僕は今日、物心ついた時から身を置いている娼館から、とある男の元へと身請けされる。
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