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「ミヤビ。迎えに来たよ。……どうかよろしく」
館の主人に伴われ、僕を迎えに来た遠野さん。……ああ、なんで顔をまっすぐ見ることができないんだろう。耳まで熱い感覚があるし、鼓動が早まって仕方ない。
「遠野、さん。……どうか、よろしくお願いします。……い、いきましょう」
不思議そうな顔をする遠野さん。まったく、誰のせいでこうなっていると思っているんだろう。
身請けしてくれる人に対しなんて態度だ、と言わんばかりの主人を背に、僕はずんずんと館の外に向かう。館の外なんてめったに出なかったのだが、久しぶりに日の下を歩けるんだ、なんていう感慨を感じる暇もない。どうしてくれるんだ。
「ま、待ってミヤビ! 急がなくてもいいじゃないか……!」
僕がむやみに歩いた先が、これからの住処とは正反対の場所だと知るのは、もう少し先の話だった。
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