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第1話 馴れ初め
困る。
「兄ちゃん、好き」
白い野球のユニフォーム姿で玄関に座った彼が、僕の膝をぎゅ、と掴んだ。
ひたむきな眸にまっすぐ射抜かれる。
「今日ホームラン打ったら、ハンバーグ食べてもいい?」
初めての告白は、十二歳になり、少年野球で四番を任された彼が出かけていく寸前に起こった。
唐突なそれに、僕は意味をはかりかねていたが。
「いいよ。頑張っておいで」
それとなく促すと、太陽のような笑みが返ってきた。
彼が家にきて半年が過ぎた頃だった。離婚した兄の海外赴任をきっかけに、僕と同居しはじめた兄の子どもの彼が、初めて笑うようになった矢先のことだ。
僕は本の虫で運動も不得意だったから、彼の伸びやかな四肢が眩しかった。
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