2 / 13
第2話 好きな人
「兄ちゃん、好きな人っている?」
ホームランを打って返ってきた彼が、沈んだ表情でハンバーグに箸を付けた。慣れない料理に分量を間違ったかと顔を上げると、彼はむすっと何かを抱え込んだ顔をしていた。
「どうした?」
「今日、チームメイトの女子に告られた。どうやって断ったらいい?」
少年らしいあどけない悩みに、僕はいい機会だと思い、諭した。
「別に断らなくてもいいんじゃないか?」
熱っぽい視線を向けてくる彼の幼さを残した顔が、失望に染まるのに気づかない振りをした。
「付き合ってみたら、好きになることもあるかもしれない。OKしたら?」
「うん……兄ちゃんがそう言うなら、そうしてみる」
僕の助言を取り入れる彼に、小さな罪悪感が生まれたが、僕はそれを無視した。
ともだちにシェアしよう!