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第1話

 自分で言うのもあれだが俺はモテる。  180を超える身長にバランスの取れた身体。誰に似たのかは知らないが、顔の造形だって中々のもんだ。それこそモデル事務所やら芸能事務所からのスカウトマンに声を掛けられた事も一度や二度じゃない。ベッドの相手にも不自由した事はないし、本気で口説いて落ちなかった奴もいない。  爺さんの遺した都心の一等地。そこにデカいビルを建てた俺は、その賃料だけで暮らしていけるだけの財産もある。更にビジネスの才も併せ持っていたのか、投資した事業も鰻登りに急成長し続け、今じゃ働かなくても金に困る事もない。  何もかも順風満帆。挫折なんて言葉、俺の辞書からはとっくに削除してやった。  欲を言えばそろそろ決まった相手が欲しいところ。毎度毎度違うタイプをベッドに誘うのも、それはそれで楽しいが、俺ももう28歳。腰を据えてただ一人の伴侶に尽くされたいと願うのも当然と言えば当然だろう。  けれどこれが中々上手くいかない。今まで散々遊び呆けてきた報いなのか、それとも二兎を追い求め過ぎてるのか定かではないが、これという相手に出会えない。そこまで必死になっている訳ではないけれど、手に入らないものがあるという事実が気に食わない。  そもそも今まで恋愛らしい恋愛なんかしてこなかった。愛も恋も遊びの延長。恋しいと思う相手は簡単に手に入り、それなのにいざ手元に置けばすぐに飽きる。仮初めの愛を囁く事には長けているが、相手からの重すぎる気持ちはどうにも鬱陶しい。要するに向いてないんだろうな。  恋しくて愛しくて、ずっと側に置いておきたいと思えるような人に、出会う事なんかないのかもしれない。こんな俺にそこまで想わせる相手なんか存在しないのかもと、傲った考えも浮かぶ。  逆に、俺をそこまで夢中にさせてくれる人がいるなら、それはどんな奴なんだろうと興味も湧いた。相手は女だろうが男だろうがどっちでもいい。ただ俺を夢中にさせてくれさえすれば…、だ。  成人してからこの方、挫折らしい挫折を味わった事のない人生において、儘ならない感情や想いに振り回されないのは喜ぶべき事なんだろう。  だからこそ余計に知りたい。それがどんなものなのか。知った上で吟味したい。果たしてそれが、俺にとって必要なものなのかどうか。  簡単に手に入るものではつまらない。かと言って高望みし過ぎも良くないだろう。そうだな、出来ればカスタマイズを楽しめるような、そんな育て甲斐のありそうな恋人なら、或いは飽きもせず俺の好奇心を満たしてくれるかもしれない。  磨けば光るダイヤの原石のような逸材。果たしてそんな出会いがあるのかどうか。のんびり構えて待つのも一興だ。人生は永い。死ぬまでにそんな出会いが一度ぐらいはあるだろう。    最近気に入ってよく立ち寄る行き付けのゲイバーで、ガチムチオネエのママを相手に酒を飲みながら、そんな事をぼんやりと考えていた。

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