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鼻で笑う
――どちらにせよ、忘年会になど出てる暇はない。
優先順位を考えても、噂の内容は余りにも馬鹿馬鹿しい。
思わず鼻で笑う。
「いや、何。その笑顔」
伊藤から貰ったドリンクのキャップを捩じっていると、「女が怖い」と言いながらアナリストの澤田が入室する。
栄養ドリンク手に資料の束を脇に挟んだ姿は、随分とくたびれて見える。
海輝は伊藤のかりんとう饅頭を奪い投げると、澤田は慌てて手を伸ばした。ナイスキャッチと伊藤が手を叩く。
饅頭のお礼を言われたので、海輝は僕のじゃないと持ち主を指さす。
「あぁ、伊藤さんのですか。饅頭ご馳走になります。それよか、ここに戻るまで朝比奈さんの事で何か、知らない部署の女に何度か呼び止められたんですけど、何ですか失恋とか彼女募集中とか。牽制してるのか共闘してるのか良く分からない雰囲気も怖いんですけど」
腹が減ってるのか疲れてるのか、饅頭のビニルを直接歯で剥がし立ったまま齧りつく。
「随分と野性的な食べ方だね」
「朝比奈さん、否定するところはしないと言いたい放題ですよ」
「かりんとう饅頭は温めると美味しいんだよ」
「話噛みあってねぇな」
「朝比奈君、絶対付き合ってる人いるでしょ。お相手の為にも否定しないと」
伊藤が饅頭を咀嚼しながら携帯電話を弄る。
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