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自称パワハラ被害者、脳内錦へ語り掛ける

十二月二十三日の午後。 海輝は上司のデスクの前で忘年会欠席の意を伝える。 「はぁ?」 おい文句あるのか、パワハラだぞこら。 と頭を鷲掴みしたい衝動を抑え自称パワハラ被害者はニコリと微笑む。 錦君、僕偉いだろ。 脳内で麗しの錦に語り掛ける。 脳内錦とは心のサンクチュアリの住人である。 錦はきっと「感情のコントロールを自ら放棄した時、人は動物になり果てる」と答えるだろう。 ランドセルを背負った頃の錦が、幾度となく口にしていた有り難いお言葉だ。 記憶の中のセーラーカラーから覗く細い頚と、浮き上がる鎖骨が庇護欲をそそる。 錦君可愛い。 小さな唇が「感情は発露するものじゃない。コントロールするものだ」と生意気な事を言う。 生意気なのも可愛い。 錦君は正しい。 そうだね、錦君。 その通りだ。でも錦君。 相手を家畜と思えば理性を放棄して暴力をふるっても良くないか? 錦は「海輝が俺に酷い事をするはずはない」何て可愛すぎる事をよく言う。 つまり、錦以外はどう扱っても良いともいえないか? いけないいけない。 錦は大声と乱暴な事をする男は嫌いなのだ。 乱暴な事をする男は動物的だと嫌われてしまう。 錦君は動物も嫌いだものね。 何故なら理性でもって感情をコントロールするのが人間だからだ。 そうだよね錦君、褒めて。大好き。

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