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この先プラトニックにつき【誘惑編】6
ジワジワと目に涙が溜まって来て、逆にここまで来てしまったら、ちゃんと言葉にするしかないと決意が固まった。
せっかく要と恭ちゃんがお膳立てしてくれたんだ……今更、拒絶されたらどうしようなんて……言ってられない。
「あき………?」
「爽…………、あのさ、」
「……な、…なに…?」
「俺たち……付き合ってるんだよね?」
「は?……当たり前だろ?」
「じゃあなんで……、………なんで、触って………くれないの………?」
「えっ………」
「…………爽は、俺の身体に触るの……嫌なの……?えっち……したく、ないの……?」
「……っ!!そんなわけ、」
やっと言えた…!そう思った瞬間、ガチャッと音を立てて入り口のドアが開く。同時にガヤガヤと複数人の男性の声が聞こえて来た。最悪のタイミングだ。
せっかく言えたのに、邪魔されるなんて最悪…と心の中で悪態をついていたら、
爽に思い切り腕を引かれた。
驚く間も無くシャワー室の中に引っ張り込まれ、他の人に見られるかどうかギリギリのタイミングで、爽はカーテンを閉めた。本来大人1人入るのがやっとのスペースに、爽と2人ギュウギュウになって息を潜める。爽は俺を後ろから抱きしめる体勢で、片手で俺の口を塞いだ。
とんでもない状況に、俺は黙ったままそっと首だけ振り向こうとするが…口を塞がれていてはそれも叶わない。
『……あき、動くな』
色っぽい声が耳の中に直に響いた。
カーテンの外では複数人の男性が喋っているのが聞こえる。シャワーを捻る音も聞こえて、ムワッと室温が増すのを感じた。
「なんか折角海まで来たのに…全っ然かわいい女の子いねーよな」
「だな~…今日はマジでハズレ……手っ取り早くヤれそうなブスすらいねぇ」
「来週出直すか?」
「そうすっか~…」
意図せず聞こえてしまった話のあまりの失礼さに、思わずゲンナリする。下衆すぎる……こんなの、全然全く1ミリも聞きたく無い。
「つーかさっきのイケメン軍団見たかよ?あんなのいたら例えかわいい女の子いても根こそぎ持ってかれるっつの!!」
「確かにな!…けどさ、あん中にすっげーかわいい男の子いたの気付いたか?」
「見た見た!!!!マジびびった女かと思ったもんな!!!」
「正直あれは……抱けるよなぁ……」
「あはははっ!!!!お前マジ!!!?」
「いやマジでそのくらいかわいかったろ!!!?」
「まぁなぁ……もしかしたら芸能人かなんかかもなー…あのレベルの美少年はその辺に転がってねーだろ」
「あー……なるほど、だから周りも美形ばっかだったのか」
彼らの話の着地点が謎な方向に向かったタイミングで、やっと少しだけ爽の手が緩められた。それと同時に、爽が俺に耳打ちを開始する。
『あき………噂されてんなぁ…?』
『は……?え、今の……俺のことなの?』
『………はぁ?お前以外誰がいんだよ……ったく相変わらずポヤポヤしてんなぁ……』
『いや……そんなことより爽…、なんでこんなこと…!』
『言ったろ…?お前の身体、絶対誰にも見せたくないんだよ俺…』
『ハァ!?そんな理由!?待ってよ…ずっとこのままここにいる気…!?』
『だって……しょうがねーだろ…お前の服洗面台に置いて来ちゃったし…』
『ええっ!?』
いや、確かに…日焼け止め塗ってたんだから手にパーカー持ってられるわけないけどさ…
っていうか……そんなことより……
この密着度はかなりヤバイ。
なんせ、身動きもほぼ取れないんだ…爽の身体は俺の身体にピタリと張り付き、上半身は肌と肌が生で触れ合っている。
ねぇ!!!!!ヤバイってば!!!!!
無理っ!!!!!
えっちすぎる!!!!
俺は、なるべく爽のことを考えないようにしようと必死になる。
そうだ……食べ物、食べ物のことを考えよう…!えっと…お昼ご飯……カフェ……オムライス……そうだ、オムライスが食べたいなっ…!
心の中でひたすらご飯のことを考えていたけれど、室温はどんどん上がるし、お互いの汗で密着している身体はどんどんえっちな感触になっていく。
やばい。これ、いつまで続くの……?
状況が好転しないまま、15分が経過した。
外にいる男たちの会話はますます下品になっていくし、暑さと体勢の辛さで頭がボーッとしてくる。頭上では爽もハァハァと辛そうに熱い吐息を吐いている。
もう、他人に身体を見られるくらいどうでもいいから、外に出たい。
そんなボンヤリとした意識の中で、
…俺はついに……
気付いてしまった。
『……………爽……さん?』
『………はい…』
『もしかして……なんだけどさ…』
『………』
『………ちんちん、元気になっちゃってる……?』
『……だから、お前さぁ……ちんちんとか言うなって…』
『……あ………ごめん……えっと……爽、勃起してる?』
『それはストレートすぎだろ』
腰に当たったガチガチの性器に、喜びが爆発しそうになる。
いや、これじゃあマジで俺変態みたいだけど…しょうがないじゃん!!!
だって…つまりこれって……爽が俺に興奮してくれてるってことでしょ…!?
『あの…あき…?』
『ん…?』
『さっきの話だけど……』
『う、うん……』
『俺があきに触りたくないとか……絶対ありえねぇから…………てか、勃ってんのバレた時点で…それは伝わってるか…』
『うん………嬉しい……』
よかった………、ちゃんと俺に触りたいって思ってくれてたんだ……爽。
『………爽……』
『ん……?』
『今………触り……たい……?』
『え……』
『俺に、触りたい…?』
俺は口にあてがわれたままだった爽の手をゆっくり外し、爽の方に無理矢理向き直る。
室温のせいなのか、興奮からなのか……顔を真っ赤にした爽と目があってドクンドクンと心臓が音を立てる。
爽の視線が俺の顔から、乳首へ移り、そして下半身に向かう。ハッとした顔をした爽の手を取り握ると、なぜか泣きそうな顔をされた。
『……っ!』
『爽……俺も、………勃っちゃった……』
『あきっ…!』
『ちゅー……して…?』
湿度がどんどん上がっていって、頭がますますボーッとする。
これは、暑さのせい?それとも…興奮のせい…?
俺、こんなえっちなこと言っちゃって……大丈夫かな……?
切ない顔をした爽に顎を掴まれ、そのまま口付けられる。待っていましたと言わんばかりに、身体がビクンッと反応してちょっと恥ずかしい。お互い汗だくで、その上とんでもない湿度の中、濃厚なキスを交わす。さっきビーチで我慢した分、何度も。いつもなら気にしてしまう様ないやらしいリップ音も、今なら外からの水の音で全部かき消えてしまうから…都合がいい。
こんなえっちなシチュエーション………ある…?
爽のギンギンに勃起した性器の先がお腹に擦れて、余計に気持ちが昂る。
気持ちいいっ……
『………ッ……ンッ……ハァッ……、爽っ…きもちっ…』
『…っ……はぁ、クソっ……ッ』
『ンッ……んんっ…ッ……』
カーテンの外でガヤガヤと聞こえていた声が急に止んで、外に誰もいなくなったのだと悟る。
よかった…!これで出られる……!
でも、今はまだ……出たくない、かも………
舌を絡ませ合いながらボンヤリと考えていると、爽は急に俺の両肩を掴み、無理矢理身体を引き離した。
突然の出来事に呆然としていると、爽は俯いたまま俺の顔も見ない。
「ッ………はぁっ……はっ……え…?」
「っ…」
「えっと……、爽……?あの……」
「……っごめんあき………これ以上は無理……」
「………えっ」
「ごめん………俺……あきに………触れ……ないっ……」
そう呟かれた瞬間、頭が真っ白になる。
なに、それ………
嘘でしょ……?
あまりのショックに胸がぎゅうっと潰されているような錯覚に陥る。息が、止まりそう。
やっぱり、爽は………
「………実は俺…っ」
「もうっ………いい」
「えっ?」
「………触りたいなんて……やっぱ嘘じゃんっ……」
「ちがっ…」
「違わないよっ!!!!」
止めようとする爽の手を振り払って、カーテンを開ける。俺はすぐに洗面所に置いてあった自分のパーカーを着込み、勢いよく振り返った。
涙がボタボタと流れ出て、止まらない。
俺の顔を見た瞬間、爽はあからさまに焦った顔をしていたけど……もう、知らない。
「……付き合わなきゃ……良かった……」
「は……?」
「だって………付き合う前は……触ってくれてたもん…!!!」
「いや、あれは薬の不可抗力で…!」
「……違うっ!!!!首、舐めて……入れたいって言ったもん!!!!」
「…………は?えっ……、えっ!?」
「……もう、全部どうでもいいよっ………!!!」
「あっあきっ……!違うんだって!ちゃんと話を…!!」
「爽なんて、大っ嫌い!!!!!」
捨て台詞を吐いて、その場から全力で走る。
後ろから爽の呼び止める声が何度も聞こえたけど、全部無視して……ひたすら走った。
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