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この先プラトニックにつき【挨拶編】2

「顔……真っ赤だなあき…」 「んー……恥ずかしいってぇ…俺相手に無駄に王子様やらなくていーから!」 「え?じゃあ、あき以外にしていいの?」 「……それは……、…だ………だめっ!」 「ぶはっ!!!!たまんねー!!!コイツまじかわいーーーー!!!!!」 「叫ぶなっ!」 ケラケラ笑っていた爽は、ポンポンと俺の頭を撫でた。そのまま、さっきまで俺の手に握られていた携帯を上から覗き込む。 「…あき……もしかして誰かと連絡取ってた?」 「え?」 「いや…すっげぇ真剣な顔で画面見てたからさ、ちょっと気になって」 「あぁ、うん!楓さんだよ」 「え…清水?バイトのこと…?」 「そーなの!今日丸一日お休みもらってるから…一応お店の様子聞いとこうと思って」 「店…そんな忙しいんだ?」 「うんっ!毎日大盛況だよ!」 オープンしたてから忙しかったけど、最近はさらにお客さんの数が増えた気がする。たぶん…うちの店はリピーター率が異様に高い。もちろん置いてある商品のセンスがいいのもあるけど…なにより、店長があんなかわいいんだからみんな癒されに来たくなっちゃうよねぇ? 「そっか…清水大丈夫そう?」 「うん…!とりあえず今日は平気!……でもね、そろそろ俺1人じゃバイトの数足りないって楓さんが嘆いてて…だから、お友達紹介してくれないかって聞かれたの」 「へぇ…」 「今はまだいいとしても、年末は今より絶対忙しいから…それまでに本気でバイト増やさなきゃやばいらしいんだ」 「そんな混んでるんだ?」 「というか…ほら、うちカフェスペースもあるでしょ?だから1人だとどうしても接客待たせちゃったりするの」 「ああ、なるほど……それで増員を検討中ってことね」 「うん……だけどね…俺友達少ないし、バイト出来る人ってことは…楓さんは学生を求めてるわけじゃん?」 「ってことは……つまり、」 「そう…現状当てはまるの……要しかいないんだけど……さすがにあり得ないよねぇ…?」 「絶対ねーな…アイツが接客したら秒速で店潰れそう」 全く否定できなくて、苦笑いしてしまう。親友の俺から見たって、要は100%絶対に接客に向いてない。あ、でも一定数要目当てのお客さんはつきそうな気もする。要とびきり美人だし、女王様だし。 「というか…そもそも要はバイトとか必要なくない?爽と同じで超ボンボンなんだから」 「ボンボン言うなっての!」 爽はムッとした顔のまま、俺のほっぺを優しく引っ張る。どうやらちょっと気に障ったらしい。相変わらず、実家がお金持ちなことは爽にとってあんまり嬉しいことじゃないみたい。不思議だよね?俺みたいな庶民からしたら、お金はないよりあった方が絶対いいって思うけどなぁ。桁外れのお金持ちともなると俺たちにはわからないような苦労があるのかな? 爽は俺のほっぺを一通り弄り終えると、少し考え込んだ後…何かを思いついたようにハッとする。 「………バイト…ね」 「……ん?」 「俺、心当たりあるわ」 「え!?」 「めちゃくちゃ適任な奴思いついちゃった」 ニヤッと笑った爽に驚く。 一緒に暮らし始めて半年、どう考えたって爽の交友関係に学生がいるなんて思えない。爽が付き合う相手って、大体が会社の同僚とか取引先の人とか…同じ年代の人ばかりだから…学生の知り合いがいるなんて初耳だ。 なんか………ちょっとやだな。 どういう知り合いなんだろ…… 爽に悟られないように少しだけ俯いて考え込んでいると、勢いよく顎を掴まれて上を向かされた。視線がバッチリ合ったと思ったら、フッと柔らかく笑う爽に…何故か少しだけ胸がキュッと苦しくなった。 「あき…?お前、まーたなんか良くないこと考えてんな?」 「えっ………だ、だって…」 「ふふっ……あきって…めちゃくちゃ嫉妬深いよな?そういうとこ意外かも」 「………ご、ごめん……鬱陶しい?」 「ううん……すっげぇ嬉しい…もっと妬いて?」 心の底から嬉しそうに、キラキラの瞳で俺に告げる爽にキュンとして…勢いよくお腹に抱きつく。ギュッと腕で締め付けると、爽のバキバキに割れたかたーい腹筋が顔に当たる。相変わらずいい身体すぎるってこの人。毎日のジム通いは伊達じゃない。 「あき…照れてんの……?あ、喜んでる?」 「………どっちも」 「あははっ…もーお前マジかわいい…!」 「なら……無意味に妬かせないでよっ……」 「はーーーー………無理、かわいくてかわいくて、ますます妬かせたくなるっての」 このいじめっ子め!!! …って返してやりたかったけど、爽の声があんまり優しいから…やめた。 爽はお腹に抱きついていた俺の頭を、ギュッと包むように抱きしめ返す。 「大丈夫だよ、あき…」 「…え?」 「会ったら絶対、あきも納得する相手だから」 「……?」 「そんなことより、早く着替えてこいって!あと15分で家出るぞ」 「ええっ!!!?嘘!?実家帰るの昼からじゃないの!?」 ここから俺の実家なんて、車なら30分もかからない距離なのに……いくらなんでも家出るの早すぎない? 「先に寄りたい所があんだよ」 「……寄りたい…所…?」 「そう…だから、急ぎ目でよろしく」 「ええーっ!!?」 爽に急かされて慌てて立ち上がると、そのまま背中を押されて自室に無理矢理連行された。 爽は、部屋のドアの前まで来るとポンと頭を撫でて俺のつむじにキスをする。 「リビングで待ってるからな」 「……あ、うん……わかった」 「…ふっ……もしかして、あき寂しいの?俺にいて欲しい?」 「そ、そんなんじゃ…!」 「かわいっ……俺もほんとは一緒にいたいけど……あきが着替えてんの見たらムラムラしそうだから遠慮しとくわ」 「…!!ちょっ…爽っ!!」 「あははっ!!怒んなよっ本音なんだから」 本音なら尚タチ悪いわ!!!! ヒラヒラと手を振りながら去っていく爽へ、当て付けのように音を立ててドアを閉めた。

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