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この先プラトニックにつき【挨拶編】9

マンションについて爽とエレベーターに乗り込むと、それまで普通に話していた爽が何故か急に黙ってしまった。エレベーターから降りて部屋の前に到着しても、爽は相変わらず無言のままだ。 さすがの爽も疲れたのかなぁなんて考えながら、部屋の鍵を開けた。 その瞬間、 グッと腕を掴まれ中に引き込まれ、優しく身体をドアに押し付けられた。 「……ちょ…!?爽っな、に…?」 「…ハァ~~~~~~…あき、さすがにあれは煽りすぎ」 「…えっ?え、えっと……あ、俺の部屋でのこと?」 「そう……、俺、毎日めちゃくちゃ我慢してんだぞ?知ってんだろ?やっちゃダメなとこであんな誘惑しやがって」 「……俺は別に…ダメな場所とは思ってなかったけど…!えと、ご、ごめんなさいっ…俺、爽とちゅーしたくて……」 「そんなん、俺だってしたいっつーの…」 「…………もう、いい?」 「ん?」 「……もう、ちゅーしてくれる?」 「………お前煽んのうますぎ」 返事を口に出す前に、顔を傾けた爽に思い切り口を塞がれた。 すぐに爽の舌が俺の口内に入ってきて、俺の舌を絡めとる。ヌルヌルと舌同士をすり合わせ、時折俺の唇も舐め上げながら丁寧に犯される。口の端からはどちらのものかわからない涎がタラりとこぼれ落ち、それすら爽が綺麗に舐めてくれる。お互いの吐息を感じながら唇を吸われ、だんだん息が上がってきた。やばい、クラクラする。 俺の両手首はドアに縫い付けられるように押さえ込まれていて、身動きが取れない。玄関は真っ暗で、リビングから漏れる月明かりだけが爽の美しい横顔を照らす。 ぼんやりとした意識の中で爽の目を見ると、理性は溶けかけていて、完全に捕食者と化しているのがわかった。 ヤバい、たまんない……… 「ンッ……、ハァッ…あっ…そ、うっ……」 「はぁっ……ッ…あきっ…やばい、マジで俺…っ」 「…っん?」 「理性、ぶち飛びそうっ……」 「へ!?」 爽はグッと苦しそうな表情を浮かべた後、俺の首筋に顔を埋めて大きな深呼吸を始めた。 「そ………爽?」 「……っぶねぇー…!!!!俺マジでお前のパンツに手突っ込むとこだった……マジで危ねぇ!!!」 「えっと……、いい……のに……」 「はぁ!?」 「いや…なんていうか、ほら…最後までするのは我慢するにしても……身体触るくらい良くない?俺、逃げないよ?」 「それはそうかもしれないけど…!とにかく今はダメだ!!俺今めちゃくちゃ興奮してるから……今あきに触ったら途中でやめる自信ないっ…一旦落ち着かせてくれ…!!」 「ねぇ、なんでそんな我慢するの…?別に旅行にそこまでこだわらなくても……」 「ダメ!!!!お前の初体験は絶対ハネムーンって決めたからには、俺は絶対実行する!!!!」 「もぉ……爽は頑固だなぁ……」 俺には正直この我慢の意味がいまだによくわからないし、晴れて完全に親公認になったんだからさっさと初体験終わらせたいな~くらいに思ってる。けど、もうここまできたら爽の好きにさせてあげるのもいいのかも。これまで本当によく頑張ってたし……それに、俺への欲望を抑え込もうと必死になる爽は、ちょっとかわいいし。 「まぁ、なんでもいいよ俺は……あと1週間だしね?」 「……人生で一番長い1週間だ……」 「あはっ!!大袈裟ー!」 「……」 「わお、爽マジでこの世の終わりみたいな顔してるねぇ」 なんだか面白くなっちゃって、俺は爽のほっぺを人差し指でツンツンといじる。いつもは俺がほっぺいじられてるけど、たまには仕返ししてあげなきゃね。 やっと玄関の電気をつけて部屋に入ると、リビングに荷物を置いてゆっくり伸びをする。 楽しかったけど、ちょっと疲れた。爽のあの緊張が、俺にも移ったからかもしれない。隣を見ると、爽もなんだか眠そうだ。 「あ……、ねぇ、爽?」 「んー?」 「さっき旭と2人で何話してたの?」 「え?」 「俺の部屋で、2人でなんか話してたでしょ?」 俺の質問に、爽はニコッと笑う。 「あーー……あれね」 「?」 「勧誘した」 「え…勧誘?」 「そう、清水の店に」 「…………え!!?」 "清水の店"って………俺のバイト先!!!? 予想外すぎる返答に、俺は口をパクパクあけて黙る。 「旭、年末にはこっち帰ってくるみたいだし、春から大学生だろ?ちょうどいいかなって」 「……え……あ、じゃあ……爽が言ってた適任って……」 「そう!旭のこと!あきも納得だろ?」 「そりゃもちろん納得だけど…!よくそんなのすぐ思いついたね?俺考えもしなかった…!そっか……確かに旭ならピッタリ…」 「だろ?俺的には……あきのバイト仲間が旭なら、マジで言うことなし!一石三鳥!」 「…え?なにそれ…どういう意味?」 「ほら、旭超有能だから即戦力であきの負担減るだろうし、バイト中あきのこと変な奴から守ってくれそうだし?あとはなにより…」 「……?」 「弟ならお前のこと口説く心配ないだろ?だからすっげー安心!」 「……ええっ!!!?そんな理由!!!?」 「俺にとっては死活問題なんで!」 呆れる俺に、爽はシレッとどこ吹く風で微笑む。 この男、どこまで用心深いんだ…… っていうかコレを朝のあの一瞬で考えてたってことだよね…?爽は頭の回転速すぎ! 「もう清水にも話通したし、たぶん今週中に旭面接行くと思うぞ」 「ハァ!!?いつ楓さんに連絡したの!!?」 「お前が俺置いてリビング行った時」 「手回しよすぎない!!?」 「フッ…あきに関わることに関しては抜かりねーからな俺」 「ドヤ顔で言うなっ」 優しく小突き合いながら、リビングのソファに2人一緒に沈む。 やばい…… 本格的に眠気が来た……

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