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この先プラトニックにつき【準備編】5
「要が過去と向き合って、その上で恭介の気持ちを受け入れられたら……うまくいくと思うよ…たぶんな」
「ほんと…?」
「うん……それに、恭介はそんなことで諦めるような奴じゃない」
「……そっか……」
「こんなこと言ったら前の彼女に失礼だけど…………正直、前の相手と比じゃないくらい……恭介は要にベタ惚れだぞ」
「…じゃなきゃ、困るよ……!!俺の要をあげるんだから!!!」
「……あき、」
急に両手首を掴まれ、顔を覗き込まれる。鼻と鼻が接触するほどの近距離に驚いていると、爽の濡れた瞳に俺だけが映っているのがわかってドキッと心臓が跳ねた。トクトクと規則正しく鳴っていた鼓動が急に早まって、みるみるうちに身体が熱くなる。
言っておくけど…俺が異常なんじゃない。こんなかっこいい人にこんな風に見つめられたら…誰だって絶対こうなるよ…?
「それ冗談でもヤダ」
「え?」
「いくら血縁者でも……俺、要に嫉妬するからな?」
「……え」
「お前が要のこと好きなのは俺も嬉しいけど………あきの一番はぜってー譲りたくない」
真剣な瞳で告げられて、目が逸らせない。
……ずるいよ、爽……
俺、そんな本気な顔で見つめられたら……もう、何も言えないってば……
「あきは……俺のだろ?だから、"俺の要"なんて言うなよ…」
「………あ、………ご、ごめんっ…その、俺の要への"好き"は恋愛とかじゃ全くなくて…純粋に親友としての気持ちだから爽への想いとはまた全然違うもので…っ!」
「……ブハッ!!!!」
「…!!あっ…!ねぇ!またからかったの!!!?」
「あははっ…違う違う!嫉妬したのはほんと!けど、お前すげー焦るからかわいくて…!」
爽は俺の身体をギュウギュウに抱きしめて、かわいいかわいいと叫びまくる。
もーっ!!!近所迷惑だぞ!樋口 爽!
……とか言って……ほんとはめちゃくちゃ嬉しいんだけどね?
「は~たまんねーわマジで…」
「もぉ…!苦しいってばぁ!」
「ごめんごめん…!………なぁ、あき?」
「…ん?」
「……恭介ならきっと要を救えるよ……だから、そんなに心配しなくても大丈夫」
「………うん」
「…信じてやろうぜ?恭介のことも………要のことも」
…やっぱり、爽ってすごい。
帰ってくるまでは不安な気持ちでいっぱいだったのに………俺、またいつもみたいに笑えてる。
人間としてこれ以上尊敬できる相手なんて……きっと今後も一生出会えないんだろうな。そんな人と一生一緒にいれるなんて、俺ってほんと……幸せ者だ。
爽の首筋に擦り寄って、キュッと小さくなりながら目を閉じる。
あ~めちゃくちゃホッとする……
…やば、油断したら……
このまま寝てしまいそう………
「……………ところで、日下部 暁人くん…」
「ん~」
「…本題、忘れてない?」
「………へ?」
本題………?
あ………そういえば……
昨日、バイトの後は予定入れるなって言われてたっけ…?確か……話しておきたいことがあるとかなんとか言ってたような………
そっか……要のことですっかり忘れてた。
爽は俺の身体を抱き上げて立ち上がる。急にお姫様だっこされた俺は慌てて爽の顔を見たけど、ニコリと微笑まれただけ。
いや、なにこの王子様………
勝手が過ぎるんですけど………
そのまま爽はズンズンと歩みを進め、リビングから出て………気が付いたら爽の部屋に着いていた。謎すぎる状況に狼狽えていると、そのままベッドの上に優しく降ろされる。
「えっ……え!?な、なに!?」
「………まぁまぁ…」
「な、なんでベッド!!!?」
「落ち着けよあき」
「だって…!!!……我慢するんじゃなかったの!?」
「セックスはな」
「は!!!?」
俺が驚きで口を開けて呆然としていると、爽はクローゼットから紙袋を取り出し、ベッドに座る俺の前にドンっと置いた。
………え、なにこれ………?
「あきは………男同士がどうやってセックスするか知ってるか…?」
「…………………ハイ?」
「……やっぱ知らねぇか……じゃあまずは説明からだな」
「は…!?いや、えっ!?なに!?」
俺が真っ赤になっているのを尻目に、爽はヨシヨシと丁寧に俺の頭を撫でる。
こんなこと聞かれるなんて、想像もしていなかった。
「あのなあき……男同士でセックスするのは男女のソレよりもかなり準備が必要なんだ…本来、入れるはずじゃないところに俺のをぶち込む訳で…だからキチンと準備しないとあきが辛い思いを…」
「ちょ、ちょちょちょちょっと待って!!!!!!」
「ん?」
「今から……何するの!?」
俺の質問に、爽はキョトンとした顔で答える。
「何って……1週間後のハネムーンに向けてお前の中を少しでも慣らしとこうと思って」
「…は……はぁ!!!?ちょ、待ってよ嘘でしょ!!!?そんなの俺聞いてないよ!!?」
「だっていきなりはぜってー入んないって…俺のデカイし」
「いやいやいやいや今から!!?ちょっと待ってよ俺心の準備できてないってば!!!!」
身体に触られるのは別にいいし、えっちすること自体はもう覚悟できてるけど……これは違う。
だって、これって……今から一方的に後ろをいじり倒されるってことでしょ!!!?いきなり!!!?
「大丈夫だって俺超勉強したから…!お前はジッとしてるだけでいい!!だから落ち着けってあき…」
「これで落ち着いてられるわけないじゃん!!!俺初めてなんだよ!!!!?なのにいきなりこんな…!」
「俺だって好きな相手とは初めてだよ!!!!」
そう叫ぶと、爽は俺の手を掴んで自分の心臓に押し当てた。
突然のことに呆然としていると、ドクンっドクンっとめちゃくちゃな大きさの鼓動が手のひらに伝わってきて……俺はゆっくりと爽の顔を見た。
爽………
爽もこんなドキドキしてたの…?
なんだ……
俺だけじゃないんだ……
「………わかるか?あき……」
「……」
「俺も………初めてなんだよ?」
「……」
「人生で初めて、愛してる相手と寝るんだ………頼むから、ちゃんと準備させて…?」
「……爽っ…」
爽は手を掴んだままベッドに座り、そのまま俺を抱きしめた。骨が軋むほどの強さに、息が止まる。
そっか………
これは準備なんだ………爽とえっちするために乗り越えなきゃいけない通過儀礼。
「今からちゃんと準備しなきゃ…1週間後に間に合わない……恥ずかしいのはわかるけど、あきのこと絶対傷付けたくないし…絶対気持ちよくしてやりたいから……協力…してくれないか?」
「ん……わか、った……ごめん、動揺して………」
「いや…俺だって緊張してるから……お互い様」
爽は少しだけ俺から身体を離して、おでこ同士を合わせると、ニコリと白い歯を見せて笑う。
ずるいなぁ………
この笑顔に、いつだって負けちゃうんだ……俺。
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