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キスする前に出来ること【解決編】10
………なんか、改めて考えてみたらあっという間だったな。今朝この家で目覚めた時はこんなに全てが丸く収まるなんて思ってもいなかった。
まるで……全て、夢だったみたいだ。
「恭介?」
「…え?」
「なんだよ…なんかずっとボーッとしてんな?ワイン飲まねーの?」
「あ…いや…飲むよ」
かなが用意してくれたワイングラスを手に取る。俺がボーッとしている間に、かなはチーズやら生ハムやらナッツやら…なんだかお洒落なおつまみをポコポコと冷蔵庫から出してきて…手際良くワインのコルクを抜いたようだ。
ちなみにこのワイン、俺からかなへのクリスマスプレゼント。何を渡すか相当悩んだけど、結局…以前かなが飲んでみたいと言っていたワインに決めた。お店で開ければフルボトルで10万以上する辛口の白ワイン。本場ブルゴーニュで作られる中でも代表格と言われる至高の1本だ。入手困難な名品故、手に入れるのにだいぶ時間がかかってしまったけどクリスマスに間に合ってよかった。
「んー…!!マジでうっまい!!!ほんっとありがとう恭介!!今まで飲んだ白で一番かも!!幸せ~!!」
「………」
「…?恭介…?」
「…………かわい」
「え………なんだよお前…いつもと全然反応違う……」
「ん…ごめんねボーッとして……やっぱ色々あってまだ頭ん中整理できてないのかも…」
「……元気出ない?」
「…ううん、元気だよ?かなのおかげでね…?でも、なんか親のことが解決したんだーって思ったら今まで背負ってたもの全部無くなった気がして……嬉しさと虚無感が入り混じってる感じかな…贅沢な話だよね?」
俺は小さく笑いながら、ワインを飲み込む。ほんとだ…すげぇうまい。
まだ昼過ぎだけど、明るいうちからアルコールを摂取するのは休日の醍醐味だもんな。飲まなきゃ損だ。
なんと言っても……今日は、クリスマスだし?
「……なぁ恭介、ずっと疑問だったこと……聞いてもいい?」
「…ん?なに?」
「お前さ、なんで俺への誕生日プレゼント……白ワイン用のグラスだったの?」
「え?」
「だって、俺赤の方がよく飲むし……あ、いや…白のグラスの方がそもそも持ってる数も少ないから嬉しかったんだけど…なんでかなって…」
「ああ…」
俺は自分の手に握られたグラスを傾ける。
そっか、これ俺があげたやつか。ボーッとしすぎてて気が付かなかった。
「思い出して…欲しかったからかなぁ…」
「…はい?なにそれ…どういう意味?」
「かなは気付いてるかわかんないけど……かなが白ワインを開ける時はね、心がモヤモヤしてる時だから」
「……」
「元気な時より、しんどい時に思い出して欲しかったんだ俺のこと……例えその瞬間隣に居れなくたって、かなには俺がいるんだって…思えるように」
俺の愛する人は…繊細でとても優しい人だから……これからも俺の知らないところでしんどい思いをすることがきっとある。そんな時このグラスを見て、気休めだっていいから…1秒でも不安なことを忘れられればいい……そう思ったんだ。
俺の呟きにかなから返事は無くて、ただ椅子を引いて立ち上がる音が聞こえた。
なんだろう…なんて考えていたときにはすでに遅くて…次の瞬間には俺の膝の上に横抱きの状態のかながいて、首に腕を回されていた。
「……へ!!!?えっ!!?なにっ!!?」
「……もう、やだお前……」
「なに!!?俺なんかダメなこと言った!!!?え、てかなんで!!?なんでこんなサービスしてくれんの!!!?」
「……サービスとか言うなばか……」
「い、いや…だって…!!!えっいいんですか!!?ふぁ、ちょ、めちゃくちゃいい匂いす…ウブッ!!」
かなはうるさいと言わんばかりに片手で俺の口を押さえた。俺が目を全力で泳がせていると、ハァ…とため息をついたかなが耳元で話し始める。
「……ほんっとムードないよなお前って……、まぁ、いいけど……元気出たみたいだし」
「……?」
「……俺な、恭介の考え方……マジで好きなんだ……」
「……!」
「普段は恥ずかしくてちゃんと言えなくてごめんな……、俺のこと真剣に考えてくれて…寄り添ってくれてありがとう…恭介……」
そんなの…!
こっちのセリフだ…!!!
そう叫びたかったけど、あいにく口を塞がれていてそれは叶わない。
「……正直に言う……、さっきのすげぇキュンとした……」
さっきの……って、ワイングラスのこと…?と目で訴えるとかなはコクッと首を縦に振って笑う。そうか……、あれがかなのハートに刺さったのか……なるほど…今後のために覚えておこう。
ここでようやくかなの手が俺の口から外れて……ギュッと抱きしめられた。
……そして、再び爆弾が投下される。
「俺……今めちゃくちゃお前に抱かれたい」
ハッとして顔を覗き込むと、真っ赤に染まった美人が俺を見て恥ずかしそうに笑った。
その瞬間、ドクドクとすごい勢いで下半身に血が集まって行くのを感じた。みるみるうちに勃起してズボンを押し上げた俺の性器を見てかなはフッと呆れたように笑う。
「あははっ!!わかりやすすぎかよ…!!お前の下半身っ!」
「いや自分で勃たせといてそれはなくない!!!?もーっ!!!揶揄わないでよかなっ!!!俺昨日から何度も勃起してそのたび治めてるから1回も抜いてないんだよ!!!?マジ限界!!!」
「………ん、いいよ」
「………は?」
「勃たせるために言ったもん」
「………はい!!?」
「……恭介」
かなは俺の膝から軽やかに立ち上がると、美しい髪を靡かせながら振り返る。
その姿があまりにも綺麗すぎて……見惚れてしまう。
「…………寝室で待ってて」
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