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バイプレイヤーズロマンス【後日談編】7

「旭くんっ……いい匂いする……」 「あははっ…僕も全く同じことずっと思ってましたよ?」 「え?ほんと?」 「…はい…楓さんはいつもいい匂いですけどね」 「旭くんこそ」 「楓さん…」 「ん?」 少しだけ身体を離して、楓さんの顔を覗き込む。 下まつ毛バッサバサの大きなタレ目がこの上なく愛らしい。あなたの瞳に僕だけが映る日が来るなんて…嘘みたい。今もまだ信じられなくって、毎朝目が覚めて1番に確認するのはあなたとの関係が僕の妄想や夢じゃないのかってこと。 でもきっと明日からは…そんな心配も薄れていくのかな。だって、毎朝1番にあなたに会える権利をもらえたのだから。 「…?どうしたの旭くん」 「楓さん」 「はい?」 「キスしたいです」 「……え」 「キス、してもいいですか?」 「……あ……うん…ストレートだね……」 「…遠回りしたくないんで」 「…そ、そっか…」 「目…開けててください」 「え?なんで…?」 「誰があなたにキスしてるのか…ちゃんと見てて」 左手を楓さんの顎の下に滑り込ませて、ゆっくり口付けると唇はカチカチに固まってしまっていてかわいくて笑いそうになった。 あまりにも余裕が無さそうなので一度唇を離して呟く。 「ン…、」 「楓さん」 「…?」 「大丈夫です」 「え…?」 「まだ舌入れないから大丈夫ですよ…」 「…!」 「だから、ゆっくり進みましょう」 安心させたくてニコッと笑ってからもう一度触れるだけのキスをし終えると、楓さんは沸騰したような顔でソファに顔面を埋め込んだ。 「楓さん…?大丈夫ですか?」 「~っ…!俺っ…!君より10個上なんだけど!!!」 「…?知ってますよ」 「なんでそんなっ…!そんな…!!」 「…そんな?」 「うぅ~………も~っ!!!!」 「?怒ってます?」 「怒ってない!!!!恥ずかしいの!!!」 「え、かわいい…こっち見てください」 「見ない!!!」 「えー…?僕楓さんの恥ずかしい顔見たいなぁ」 「やだ!!!」 照れながら怒る姿があまりにもかわいくて、僕はケラケラ笑いながら楓さんの背中を撫でる。 さてさて、困った。僕の恋人は僕が考えていたよりずっとウブみたいだ。嬉しい誤算だけど、今後も照れて顔を見せてくれないのは…ちょっとなぁ。 少し考えて、僕はニヤリと笑う。 「さて……楓さん、ケーキ…食べましょうよ」 「……うん、食べる……」 「そう言えば…」 「……?」 「僕シャインマスカット大好きなんです」 「え!ほんと!?」 キラキラした目をした楓さんがバッとソファから顔を上げた瞬間、すかさず口を塞ぐ。 「ンっ…!」 「あはっ、不意打ちせいこーう」 「ちょ、ねぇ!旭くんっ!!!意地悪!!!」 「顔見れて嬉しい…楓さん……もう隠さないでください」 「え、いや…だって…」 「かわいい…全部見たい」 そのまま柔らかい唇目掛けて連射するようにフレンチキスの雨を降らせ、最後に頬に優しくキスすると、今度は真っ赤な顔を隠さず少々悔しそうな楓さんと目が合った。 わ、珍しい表情だ。 「……っ、絶対18歳じゃないっ…」 「18歳です」 「ううっ…大人なのに翻弄されてて…俺かっこ悪いぃ…」 「かっこ悪くないですよ…世界一かわいいです」 「フォローになってない!」 「ふはっ…すみません」 僕が吹き出すと、楓さんも一緒に吹き出す。 甘酸っぱい雰囲気のまま、2人でテーブルのケーキをつつき出す。 楓さんの作ってくれた大粒のシャインマスカットがたくさん乗ったレアチーズケーキは、これまで食べたどんな食べ物よりも幸せの味がした。やっぱり楓さんは、魔法使いかもしれない。 「……美味しい?」 「ん…、最高です」 「良かった…!」 優しく微笑んだ楓さんを見て、この日々が一生続くことを祈らずにはいられない。 「楓さん…これからもよろしくお願いします」 「……!なぁに、改まって」 「だって、これからずっと一緒にいたいから」 「…っ、旭くんって…やっぱ超ストレートだよね…」 「嫌ですか?」 「……いえ、ありがたいです」 「ふふっ…なら、よかったです」 楓さんはフォークを置くと、少しだけ僕との距離を詰めて…真っ赤な顔でこちらを見た。 「あの、ね……旭くん…」 「…?はい」 「………ゆっくりじゃなくて、いい…かも」 「…え」 「ちょっとだけ、早くても……いいかも……」 恥ずかしさを必死に押し殺してるだろう顔を見て、ようやく楓さんの意図を察する。 キュッと手を握られて、いよいよ止まるなと合図をされた気分だ。 「………楓さん」 「……ん」 「右手が治ったら………最後までしていいですか」 「……ん?最後…?」 「はい、楓さんのこと抱きたいです」 「……んエッ!!!?ちょ、それはスピーディすぎない!!?」 「自分で煽っといてそういうこと言うんですか?」 「だって…!」 「それにまだ手が治るまで時間かかるんで大丈夫ですよ」 「いや、それはそうかもしれないけど…!」 「だから…今日はご要望通りもう少しだけ進みましょう」 「……え」 「口、ちゃんと開けてくださいね」 「…!」 真っ赤な顔のまま固まった恋人を、優しくソファの背もたれに向かって押す。柔らかい髪がソファに美しく散らばり、恥ずかしそうにこちらを見上げた姿に満足した僕は……今日1番のわるーい顔で微笑んだ。 「あ……あさ、ひく…」 「……ほら、」 「……え?」 「楓、口開けて」 「は…!?ちょっ…、急にタメ口はズルいってあさ…!」 楓さんに騒がせる隙を与えないように、すかさず蓋をする。 濃厚な粘膜の接触に小さく震える楓さんを見て、僕はようやく目を閉じた。 …To be continued.

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