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ミスターバイオレンスの遺言【後編】12
「……えっと…目覚めた…?おはようかな…身体大丈夫?」
目を開いた瞬間心配そうな恭介の顔が目の前にあって思わず悲鳴をあげそうになった。すぐに近くで転がっていたクッションを恭介の顔面に押し当てる。それも容赦なく、グリグリと。ちけーんだよ朝から。
「ウグっ…!なにすんのぉ!?」
「チッ…うるせーな……大丈夫なわけねーだろ…昨日その馬鹿でかいちんこ入れられたんだぞこっちは…初めての奴に容赦なくヤリまくりやがって…」
「言い方ぁ~!!!普通こういう時って嘘でも大丈夫だよって言うんじゃないの!?そもそもかなが暴走してもいいって……いや俺が悪いけどさ!?」
「暴走しすぎだろ!!!痔になったら一生恨んでやるからなっ!!」
「初めて寝た夜の翌日とは思えないね!!!?」
朝からでかい声を出したせいで余計に起きるのが億劫になってしまった。俺は小さく唸りながら上半身を起こす。ふと下に視線を向けると胸元から首筋にかけてしっかりめのキスマークが点在していてさっきより強くクッションをぶん投げた。とっさの行動であっても見事に恭介の顔面にヒットするところがさすが俺…どんな状態でもコントロール抜群。
「ウグッッ!!ねぇなんで投げんの!!?」
「てめー!だから言ったろキスマークつけんなって!!なんだよこれ盛りのついた男子高校生か!!!」
「ええ?ああ…それ?そんなに強く止められなかったからいいのかと思ってた…」
「止めたろ!?すっげぇ止めたろ俺!?死ぬ気で止めてたからな!!?都合よく記憶書き換えてんじゃねーよ!」
「え~だって我慢できなくて……おー…陽の光の下だとさらにすんごいね……すげー綺麗な内出血」
「ふざけんなよ首元ざっくり開いた服着れないだろこれ!!」
「大丈夫!!!俺が見るたびに思い出して興奮するだけだし見えても平気!!」
「…………あ~……もういいや……」
まだまだキレたいのは山々だけどもうこれ以上このアホと言い合ってもこっちが疲れるだけだと察する。もうやだなんなんだよコイツ。誰だよこんな奴と寝たの。……いや俺か。
不毛な自問自答を脳内で繰り返しながらベッドの下で丸まっていたバスローブを拾い上げた。それをゆっくり羽織り、髪をかき上げる。少し動いただけで下半身全体がギシギシと痛むのを感じた。
「……いってぇ…!…なんだよこれ筋肉痛…?」
「どこら辺が痛い?」
「あー……えっと、腰と…足の付け根とかいろいろ…」
「……付け根か……揉む?」
「おいあからさまに鼻息荒くすんな」
「いやいやいや違うってこれは純粋な心配だよ!?下心ナンテナイヨ!?」
「片言じゃねーか……てかお前が俺に下心無かったことあんの?」
「……ないか」
「この変態」
「いや~出会った瞬間からかなと寝ること考えてたからなぁ~あはは」
「あははじゃねーよ…チッ…夢が叶って良かったですね!」
「ふはっ…!怒んないでよかなぴょん」
「………はぁ…もう怒る元気ねーよ」
こんなケダモノに足の付け根なんて揉ませたら朝から一戦交えることもあり得る…と、仕方なく自分で揉むことにする。きっと正常位の時無理な体勢でいたせいだ。もともと俺は身体硬い方だし…そうじゃなくても正面から足かっ広げて男が男性器を受け入れるなんて負担がでかいに決まってる。これって慣れで解決するのか…?いやしねーよな…?マジかよ超しんどいだろ。
「次から基本的に後ろから入れるね?」
「え?」
「正常位…かなりしんどそうだったから…」
「……やめなかったくせに反省した顔すんな」
「ごめん…だって気持ちよくて…正常位だとかなの顔ちゃんと見えるし…かなの乳首も吸」
「あーもういいそれ以上言うなっ!!!」
恭介の言葉で昨晩のベッドでの囁き合いが鮮明に蘇り、急に恥ずかしくなる。身体を見られることも、セックス中に顔を見られることも別にいい。ただ…理性がなし崩しになって訳のわからないいやらしい言葉を沢山吐いたことは死にたいくらい恥ずかしい。頼むから思い出させないでほしい。そう思っていたのに、一瞬昨晩の情事の記憶が生々しく頭を掠める。
『あ…、きょう…すけっ…』
『ごめんかな…はぁ…入れてから結構経ったけど…まだ痛い?痛くない…?それだけ、教えて…!』
『まだ、ちょっと痛いけど…!んっ…でも…もう慣れてきたから…平気っ…』
『痛いの…?痛いならもう少し…』
『いい…、もうしていいからっ…』
『ダメだよ…!っ…おれ、まだ動かないから…!痛いなら無理しないで…!』
『無理してないっ…!いいからもう動けよばかっ…』
『でも俺っ…!』
『ああもうっ!!焦らしすぎだクソバカ恭介っ…!もう気持ち良さのが勝ってんだよ!!こっちはお前が好きだから少しくらい痛くてもいいって言ってんだろうが!!早く腰振らねーと上に乗っかって精子なくなるまでイかせるぞ!!』
『………』
『………え?…ンッ、ちょ、あっ!ひゃっ…!』
『はぁ…かなのばか…興奮し過ぎてちょっと出ちゃったじゃん…』
『アッ…!んっ、待っ…!あっ』
『やばすぎ…この人どんだけ俺のツボ知ってんの…?こんなの、もう…、ッ…!無理だろ…!』
『無理…?んっ…アッ…なんで、むり…?』
『こんなエロいなんて聞いてないって…!…っ、もうかなとセックスしない日常が無理…!毎日じゃなきゃ無理…!』
『そんなの…!俺がむ、りっ…!!アッ、あっ…!やだっ…!あっあっ…!』
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