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冬2
山を下りる
「馨......」
「環、どうしたの?元気ないね」
「んーん。なんでも、ないよ」
笑って誤魔化す
「環?」
心配そうな顔で覗き込んでくる
やっぱり、君は誤魔化せない
「ちょっと、ね。悲しいことが......あったんだ。また、ひとりになっちゃうかも」
「環、おいで」
馨が自分の前を空けてそこをポンポンと叩く
側まで行って背中を預けて座る
「誰か、ご家族のこと?」
フルフルッと首を振る
涙が出てきて頬を伝う
「困ったね......泣かないで?」
「む......りっ......」
ギュッと抱き締められた
驚いて振り向くと間近に馨の顔があった
トクン
心臓が音をたてる
「あそこ、桜の木の下に行こう」
「うん......」
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