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呻き声
誰かの呻き声がする
「誰?」
声のする方へ歩いていくと男の子が1人座ってる
近づくと男の子が顔を上げてこちらを見た
男の子の顔には、見覚えがある
「馨......」
切れ長の目には、溢れんばかりの涙を溜めている
呻いてたんじゃなくて、泣いてたんだ
こんなに小さな歳の子が声を殺して
「お姉ちゃ......なんで、僕のこと知って、るの?」
「馨......君が好きだからかな?どうして泣いてるの?」
小さな馨に告白
なんか、ちょっと照れるな......
「僕のこと、好き?......父さっ、御前は、僕のこと嫌いなんだ」
「どうして?」
「弱いからっ......滅しろって言われた妖卯を逃がしたんだ。悪さしないからっ、そしたら叱られた。ヒジョウになれって」
「馨は、強いよ」
「滅しなかったのに?」
「うん......最後まで消 さない方法を考えてた」
「強いの?」
「うん。沢山勉強して、物知りで......強くて優しい。僕の大好きな人だよ」
そう言って笑いかけると
いつの間にか泣き止んだ馨が笑顔になっていた
「ありがとう!綺麗な、お姉ちゃん」
何処かへ走っていく小さな馨は、消えていった
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