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満開の桜(馨視点)
環を貫いた後
んあぁぁぁぁっ!
最後の力を振り絞ったのか、環が声を上げる
頭まで出かかっていた子を引っ張る
んぎゃぁあぁぁぁ!んきゃぁ!
子供が生まれた
俺達の子だ
嬉しいはずなのに、苦しい
「環――!環――!しっかり、しろっ!」
止血をするも、力を入れたせいで出血が酷い
血の気を失った白い頬にひらひらと何かが落ちてきた
見上げると辺り一面満開の桜
遅い、全てが......遅かった
もう、一緒に見てくれる人が......いない
妖力で、咲いてるん......だろ?
助けて......くれよ
血が......
「環!やっと、逢えたのに......置いていくなんてっ......許さない。子供も可愛いよ、君に似てる」
応答は、ない
「環、お願いだから目を開けて......環!愛して......るんだ、何よりも誰よりもっ」
『馨!綺麗だねっ!ほらっ、満開!』
君がいないと、桜でさえ霞んで見える
「環......お願いだから目を......」
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