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大切な人
「どうしたんだ、環?」
「えっ......?」
顔をあげると馨が立っている
メガネだ......格好いい
「拗ねた、か?」
「えっ?」
眉尻を下げて困ったような表情に自分の置かれている状況を把握しようとする
ダイガクセイの馨?
「『ひとりにして悪かった』......早速、逢いたくなってて。これは、夢か?」
――ひとりにして、ごめん
後ろに座って抱き締められた
安心する......
「ひとりじゃないよ」
「だ、れと......一緒に居るんだ?」
声が少しだけ固い
「馨だよ。馨がくれたんだ」
「何を?」
――なんだっけ?
「た、いせつなもの」
「俺より?」
首筋に鼻をつけられる
「んふふっ、くすぐったい。比べらんないよ......2人とも大切」
「2人?」
「うん、2人。僕の大切な家族」
【本当に?】
「うん。何にも代えがたい。悲しませるなんて、絶対できない」
【本当にそう言えるのかい?】
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