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「マーキちゃん、一緒に帰ろ?」
放課後の教室で、ノロノロと帰り支度をしていると、廊下から藤田の脳天気な声が響いてきた。
マキちゃん言うな、ハズイ。そして、俺はメチャだるい――。
「お前いつから『マキちゃん』になったんだ?」
俺と藤田の事を交互に見て、訝しげな顔をしている柿本が『その顔でマキちゃんかよ』と笑い出した。
「知るか、藤田が勝手に言ってるだけだし」
俺が言い捨てるように答えると、柿本はますます絡んできた。
「何だよ、牧野。やけに不機嫌じゃん。ってか、今日ずっと元気無かったし、休み時間も寝てたっしょ? どっか具合悪いとか?」
まぁ、確かに調子はあまり良くない。でも、病気ってわけじゃない。
「それがさ、マキちゃん、俺のせいで――」
いつの間にかすぐそばまで来ていた藤田が、当然のような顔をして俺の隣の席に座った。
「藤田、お前は――」
『余計な事言うな!』と心の中で叫びながら、俺を見てニヤケている藤田を睨んだ。
「何だよ、藤田? お前のせいで牧野がどうしたんだよ?」
思わせぶりな藤田の言葉に、柿本がグッと食いついた。
「それがさぁ」
聞いてほしいって顔してるし、声にも思い切り出てるぞ、藤田!
「おい、藤田、ふざけんな……」
藤田の横っ腹を小突きながら、俺は小さな声で抵抗した。
なぁ藤田、俺たちまだ1年以上この学校で過ごさないといけないんだぞ?!
「それが、昨日帰る時にさ、俺、そこの階段でこけて落ちそうになったんだよ。その時、偶然マキちゃんがヒーローのように現れて、かっこ良く受け止めてくれたんだ」
「へー。すごいじゃん、牧野」
柿本が片眉を上げながら、感心したようにそう言って、俺の肩をポンポンと叩いた。
「でもさ、俺を受け止めた衝撃で、マキちゃんはバランス崩しちゃって、結局2人一緒に落ちて、マキちゃんが俺の下敷きになっちゃったってわけ」
「ふーん、そうなんだ。そりゃ災難だったな、牧野。怪我しなかった?」
「うん、まぁ、ダボク? だけ……」
柿本は単純に藤田の言葉を信じてくれたようで、それ以上追求してこなかった。
それにしても藤田、よく口からでまかせを言えたもんだぜ。
「さ、帰ろーよ。マキちゃん」
藤田が満面の笑みを浮かべながら、俺の腕を引っ張っていた。
「あ、あぁ」
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