2 / 4

「なぁ、お前ら一緒に帰ってたっけ?」  リュックを背負って、藤田と一緒に教室を出ようとしていると、柿本がまた声をかけてきた。するどいぜ、柿本。確かに、俺らは友だちではあるけれど、一緒に帰ったことは殆どない。 「昨日からだよ。だって俺達……」  藤田が柿本の方に振り返って、質問に答えようとしている――。  だーかーらー!! 「良いから、行くぞ、藤田」  俺は慌てて藤田の腕を引っ張り、教室から連れ出した。 「なんだよ、マキちゃん。つれないなぁー」 「お前さ、余計な事、言わなくて良いだろうが?!」 「いいじゃん別に。俺らが恋人同士になったこと言ってもさぁ」  藤田が不満そうに言って、俺の頬をギュッとつまんだ。 「イテッ……」  俺ら本当に恋人になったのか? いまいち実感が無い。 でも、俺の隣に居る藤田は、えらく嬉しそうで……。なんだか恥ずかしいくらいだ――。 「うふふーほっぺた、プニプニで可愛いー。俺さぁ、みんなに言いたいんだよ。マキちゃんは俺の恋人だから、誰にも渡さないぞ! ってさ」  廊下を歩きながら藤田が上機嫌で言った。おいおい、そのマキちゃんが俺だってバレたらヤバいだろ? 「良くない。お前も俺も、変な目で見られるぞ」  俺たちの学校は、男女共学なんだから、男同士のカップルなんて受け入れてもらえないだろ? いや、男子高だったとしてもどうなんだ?   まぁ……、今じゃドラマでもやってるくらいだから、男同士の恋愛も普通になりつつあるんだろうけど――でも、俺には現実的な話じゃないんだ。アニメのキャラ同士をくっつけて、女子が騒いでるとか、そんなイメージが強くて――。 「俺は平気だぜ。マキがいてくれたら何も恐くないって感じ」  藤田がサラッと言いのけた。 「そ、そうか?」  俺は藤田の言葉が嬉しいような、恥ずかしいような、複雑な気持ちになった。  藤田の天然は何処までなんだか良く分からない。何も考えてないんじゃないか? って思うときもある。 ……いや、もしかすると、こいつは俺よりずっと男らしいのかもしれない。  昨日だって――。 「ねぇ、まきのー。今日も家、来ない?」  学校を出た後、駅へ向かう商店街を歩いていると、しばらく黙っていた藤田がそう言ってから俺の顔を覗き込んだ。  俺の心臓がドキン!とはねた。 「ダメ、俺ダルイし。身体痛てーもん」  ドキドキし過ぎて恥ずかしくなり、俺は下を向いたまま、そう答えるのがやっとだった。 「ふふっ、マキちゃん、かわいかったなー」  俺が困っている事に気付いているのかいないのか、藤田の声がメチャメチャ嬉しそうだった。 「はぁ? かわいかったとか言うな」

ともだちにシェアしよう!