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「なぁ、お前ら一緒に帰ってたっけ?」
リュックを背負って、藤田と一緒に教室を出ようとしていると、柿本がまた声をかけてきた。するどいぜ、柿本。確かに、俺らは友だちではあるけれど、一緒に帰ったことは殆どない。
「昨日からだよ。だって俺達……」
藤田が柿本の方に振り返って、質問に答えようとしている――。
だーかーらー!!
「良いから、行くぞ、藤田」
俺は慌てて藤田の腕を引っ張り、教室から連れ出した。
「なんだよ、マキちゃん。つれないなぁー」
「お前さ、余計な事、言わなくて良いだろうが?!」
「いいじゃん別に。俺らが恋人同士になったこと言ってもさぁ」
藤田が不満そうに言って、俺の頬をギュッとつまんだ。
「イテッ……」
俺ら本当に恋人になったのか? いまいち実感が無い。
でも、俺の隣に居る藤田は、えらく嬉しそうで……。なんだか恥ずかしいくらいだ――。
「うふふーほっぺた、プニプニで可愛いー。俺さぁ、みんなに言いたいんだよ。マキちゃんは俺の恋人だから、誰にも渡さないぞ! ってさ」
廊下を歩きながら藤田が上機嫌で言った。おいおい、そのマキちゃんが俺だってバレたらヤバいだろ?
「良くない。お前も俺も、変な目で見られるぞ」
俺たちの学校は、男女共学なんだから、男同士のカップルなんて受け入れてもらえないだろ? いや、男子高だったとしてもどうなんだ?
まぁ……、今じゃドラマでもやってるくらいだから、男同士の恋愛も普通になりつつあるんだろうけど――でも、俺には現実的な話じゃないんだ。アニメのキャラ同士をくっつけて、女子が騒いでるとか、そんなイメージが強くて――。
「俺は平気だぜ。マキがいてくれたら何も恐くないって感じ」
藤田がサラッと言いのけた。
「そ、そうか?」
俺は藤田の言葉が嬉しいような、恥ずかしいような、複雑な気持ちになった。
藤田の天然は何処までなんだか良く分からない。何も考えてないんじゃないか? って思うときもある。
……いや、もしかすると、こいつは俺よりずっと男らしいのかもしれない。
昨日だって――。
「ねぇ、まきのー。今日も家、来ない?」
学校を出た後、駅へ向かう商店街を歩いていると、しばらく黙っていた藤田がそう言ってから俺の顔を覗き込んだ。
俺の心臓がドキン!とはねた。
「ダメ、俺ダルイし。身体痛てーもん」
ドキドキし過ぎて恥ずかしくなり、俺は下を向いたまま、そう答えるのがやっとだった。
「ふふっ、マキちゃん、かわいかったなー」
俺が困っている事に気付いているのかいないのか、藤田の声がメチャメチャ嬉しそうだった。
「はぁ? かわいかったとか言うな」
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