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第1話
1月22日。
正月休みに、3連休も終わり、彼らが通う蓮田大学でも講義が本格的にスタートして1週間が経とうとしている。
彼ら……それはシェアハウス「23 Futures」に現在、生活している4人の男子大学生達だった。
「さて、これで準備できた!!」
帰省や年末年始バイト、ゼミとかバイト先の新年会で延びに延びていた「23 Futures」新年会。
黒髪にシャツ、スラックスの大学生・九岡(くおか)が人数分の器とグラス、鍋とコンロを用意すると、九岡を手伝っていた六川(むかわ)が「お疲れ様」と言う。
「ロクもコタツ、出してくれてありがとう。まぁ、俺の方は白菜とかきのことか切って、皿に盛りつけただけど」
「あ、豆腐と油揚げもある! ありがとう。さっき、ゴーちゃんから連絡あって、もう帰れそうだって」
「了解ー。サンも19時には戻れるみたい。もうコンロと鍋も用意したし、一応、カニも肉も沢山あるからフィフティーン達も文句ないだろう」
九岡の言うフィフティーンというのは九岡と六川のシェアハウス仲間で、三浦(みうら)と五島(ごとう)のことだ。
三浦がサン、五島がゴー。3×5で、15(フィフティーン)なのだが、彼らは小中高でも同じ学校だったらしく、中学校だけ一緒だった九岡も何かにつけて、2人が言い合いをしていたのを知っていた。
「仲が悪い訳じゃないんだけどね。サンは理数系で、無類の肉好き。ゴーは文系で、肉は嫌いじゃないけど、魚介類派。あとはサンがイヌ好きで、ゴーがネコ好き……」
「昨日は映画は『邦画』か『洋画』かで話していて、映画の次は確か『きのこの谷』と『たけのこの町』だったかな?」
「あ、映画の前は某ゲームの『紅子』と『葉子』に結婚を申し込むルートはどっちが至高かで言い合いになってたよ……まぁ、平和ちゃ平和だよね」
九岡が呆れたように笑うと、コタツの出されたシェアハウスの共有リビングには静けさが訪れる。
「……」
九岡は気まずくなり、六川を見ると、相変わらず全体をグレーに染めて、青や緑でグラデーションをつけている派手な髪色が目についた。
実は九岡が初めて六川を知ったのは大学に入ってからでも、このシェアハウスに入ってからでもない。
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