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 ~・~・~ 回 想 ~・~・~ ───俺と彼女が出会ったのは、大学の時。 俺の両親は教職に就いていて 俺にも同じ道を進むように 小さい頃から言われ、躾られてきた。 特になりたいもの、 夢も希望も目標も 何も持っていなかった俺は 言われたとおり教師になるべく 敷かれたレールの上を歩いていた。 あれをしてはいけない、 これをしてはいけない、 真面目に生きろ、 人の上に立つ人間になれ ・・・・等々 色々、口うるさく細かく言われても 特に反抗する気力もなく 言われた通り過ごす毎日。 でも、ただ1つ。 両親の望みを・・・ 叶えられそうにない事、 それが・・・結婚することだった。 俺は、同性しか好きになれない。 気づいたのは、中学生の頃。 ハッキリとした恋愛感情をもって 好きになったのが クラスの「男子」だった。 中学を卒業して、高校生になっても 好きになるのは変わらず「男」で。 女の子には全然 興味は湧かない。 どんなに可愛い子でも。 例え、告白されても。 つきあいたいなんて微塵も思わなくて。 ああ、やっぱり自分は そういう人間なんだ、と 思い知った。 だけど 厳格すぎる両親に そんな事を言えるはずもなく 自分の中で それが どんどん思い枷と なっていった。 そして数年後 とうとう恐れていた両親が婚約者として 彼女を会わせてきた。 “ 結婚して早く孫を ” なんて言われて・・・焦った。 結婚なんて出来ない。 俺は・・・・ 女の人を愛せない。 それでも 珍しく上機嫌な両親には どうしても言えなくて。 俺を置き去りにして、話は どんどん進んでいく。 彼女は・・・・さすが両親が 気に入っただけのことはあり、 優しくて 控えめで 相手をたてる、 よく 出来た人たった。 いい人だからこそ、 俺と結婚するなんて・・・ 申し訳なくて居たたまれなくて 悩んだ末に 結婚式の少し前になって 俺は彼女に すべてを話した。 彼女は・・・、 しばらく 考えてから 真っ直ぐに俺を見つめ、こう言った。 「それでもいい」と。 今、ここで私が断っても きっと、あなたの両親は、 次の相手を見つけてくる、 私なら、あなたを理解できる、 すべてを受け入れる、 だから結婚しましょう、と。 穏やかに とても 綺麗に笑ってくれた。 そんな彼女を・・・ 初めて愛しいと感じた。 俺は、救われた気がした。 気が・・・・したんだ。

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